Akira Terada×全日空商事×Gallery Seekでインタビュー後編です。
(S) ANA Gran Whaleに出品することになり、意識したことはありますか? (T) ANAなので空や旅に対する意識が強い作品を意識しました。 風景と空っていうものが綺麗に見える様にとか、旅先のその目に見えているものを意識しました。 あと、僕がそもそもアーティスト活動を始めるきっかけがVtuberだったので、 アートとかヴァーチャルの中でその旅とかを疑似体験するというのも意識というか興味がありましたね。 今まではリアルでしか体験できなかったことが、バーチャル空間による疑似的な旅行によって、 その体験を蓄積していくような体験って、新しいなって思いますし、バーチャルの中だからこそ、 リアルと同じ風景を見せてもあまり面白くないなという考えもあって。 バーチャル空間だからこそ、普段目に見ているものと、全然違う風景が広がってるようにしたいなと。 (A) 今回はANAのNFTマーケットプレイスがGran Whaleという名称というのもあり、鯨の作品「Ciel Whale」も制作してくださいました。 「Ciel Whale」 (T) 鯨の作品では自由変形による選択を初めて試しました。 普段は円形とか四角とか、幾何学的な範囲選択をしているんですが、何か面白い範囲選択ってないかなと考えてまして。 そんな時にGran Whaleの名称を教えて頂き、具体的にイメージが湧きました。 幾何学的だと動きが二次元的になるんですが、自由変形を入れたら、三次元的な動きができるなって思っていて。 (S) 確かに奥行きとかも自然に三次元的にも想像できますね。 最初に仰っていた“見えないもの”の中には、今回の鯨の様に生き物的なものもイメージはしてたんですか? (T) そうですね、空に浮かぶクジラだったり、本来海にいる生物が空を飛ぶようなイメージだったり、鳥が海を泳ぐような感じとか。 (S) なるほど、なるほど。子供の頃にイメージしてた世界をどんどん具現化できる感じですね。 (T) そうですね。電車に乗ってても、ふと空を見た時に何かが一緒に走ってるような、空に鯨が飛んでるようなイメージとか。 昔一度は思い描いていた世界がずっとたまっていて、それを作品にアウトプットしていっています。 (S) なるほど、なるほど。 でもそう考えると、コロナ禍の時期とかはインプットの機会は減っていましたか? (T) そうですね、やっぱり旅先とか出かけることが多かったからこそ、いろんな風景に出会えて、そこで刺激を受けていました。 ただ、屋内の作品もたまにあって、その時は目の前にある異質感みたいなものが表現できて、また違う面白さもあります。 距離が近いので、その起きてる事象が近く感じられます。 (A) あと今回は伊丹空港で取材した新作も2点制作して頂きました。 「Air Noisy」 (T) 飛行機を真下から見上げる様な「Air Noisy」と夜景をモチーフにした「Sparkle」の2点を制作しました。 「Air Noisy」は伊丹空港の千里川土手っていう飛行機が着陸するところが間近で見れる土手があって、 今回そこで撮影した写真を基に制作した作品もあるんですが、500枚近く撮影して、結局3時間掛かりました。 写真を自分で撮るのもかなり苦労しますね。 「Sparkle」 (T) 「Sparkle」は今回では唯一夜景の作品です。 今回同じ場所で昼と夜両方で撮影していましたが、伊丹空港は夜景が綺麗で有名な空港ですし、こちらを作品にしました。 黄色が目に入ってきますし、他の作品と異色なイメージで、より抽象的なものに見えてきます。 (S) 暗闇の中に浮いているようにも見えますし、下部分の密度と上部分の余白のコントラストも面白い作品ですね!
(A) 今回ご一緒させていただくきっかけともなった、「見慣れた景色が少し視点を意識することで全く違った見え方になる」という Teradaさんの制作コンセプトは私どものアートへの視点にリンクする想いがあると感じています。 例えば、なにかのきっかけからある土地の文化や歴史を知ることで、その場所と自分との心の距離や感じ方が変化することがあったりしますよね。 色々な視座を与えてくれるアートには、そういう「きっかけ」となる力があります。 Teradaさんは作品を見る人にどんなことを感じて欲しいか教えて頂けますか? (T) 普段見慣れた風景ものっていうものが一つ手を加える。 多分一つ自分の考え方を変えるだけで、まったく違った風景に見える。 普段みんなスマホを見て、音楽でイヤホン聞いて、外界について考えることがとても減ってきたと感じます。 外を見てもただ見慣れた風景だからあまり意識を向けないというか。 例えば、街中でビルが壊されていたのを見て、毎日見ていたはずなのに、何のビルだったのか思い出せないとか。 僕が建築系とか、再開発の仕事をしているからというのもあるんだと思いますが、 風景を見てない、街を見てないから街の変化に気づけないっていうのは、とてもその豊かなことじゃないって考えていて。 だから、それを僕の作品を通して、普段見ている風景でもこういう風に見えてる人もいるんだっていうのを知ってもらって、 普段見ている風景のちょっとした変化に気づいてくれたら嬉しいなと思います。 (A) 最初、作品を拝見した時は、単純にカッコいいなってところから入りました。 ご一緒する中で、私たちとどういうストーリーを生み出せるかという観点で、 自分なりにTeradaさんの作品を観察したり、思考を伺っていくと、 見慣れた風景や日常とか、バーチャルと日常って全く別々のだったのが、時代の流れにおいて交わってきている様なイメージで、 Teradaさんのテーマや考えていることは、ANAグループがメタバース空間を作り出していることの意味を象徴している様に感じています。 (T) そうですね、今の時代ってリアルとバーチャルが凄いボーダーレスになってきていて、僕の作品ってリアルを題材にしながらも、 少し見方を変えることで、バーチャルに見える様な、2.5次元というかバーチャルとリアルの合間をを繋ぐようなイメージで作ってるところもありますね。 そういう意味でも今回のプロジェクトではシナジーを感じていただけているんだと思います。 (A) 航空会社はあらゆる面で常に完璧を求められています。 ただその一方で、先に進むために思考の余白を残しておかないといけないという思いもありまして。 Teradaさんのグリッチがバグであり、余白であるという話を伺って、完璧であるのはもちろんなんだけど、 その先に行くために、常に思考をして、新しい視点を持つということを 前向きに捉える会社だというメッセージになればいいなというふうに感じました。 (S) 改めて僕としても、TeradaさんとANAのコンセプトって凄いマッチしているなと感じているので、 今回だけではなくて継続的にお互いフィードバックしあって、 何か良いものを生み出せるような関係になれれば一番いいかなと思っています。 (A) こちらこそです。ありがとうございます。 Akira Teradaインタビュー前編はこちら ANA Gran Whale Akira Teradaアイテムページはこちら