友田恵梨子インタビュー2021

本日より、Gallery Seekにて約2年ぶりとなる個展を開催される友田恵梨子先生。お話をお聞きしました!


-約2年ぶりの個展ですが、心境の変化、作品の変化はありましたか?

この1年で新型コロナウイルスに見舞われたり、身近な問題として再生可能エネルギーについて考えさせられることがありました。
以前より自然に抱く思い、祈りを作品の核に置いてきましたが、よりその意識が強くなったため、テーマ性も強く持つようになった気がします。
※(「再生可能エネルギー」広義には太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、利用する以上の速度で自然界によって補充されるエネルギー全般を指す。太陽光や風力など)



-今回の個展のテーマを教えてください。

昨年11月、アメリカでは民間企業初となる有人宇宙ロケットが飛び立ち、宇宙産業への民間企業参入という人類の新たな一歩を踏み出しました。
翌12月には、はやぶさ2が数々の困難を乗り越え小惑星のかけらを地球に持ち帰り、また新たな星へ旅立ちました。
2020年は世界が新型コロナウイルスに翻弄されながらも、宇宙開発では歴史的転換点を迎えるという、人類史に残る大きな動きのあった年でした。
そんな時事背景から、過去〜未来へどんな時代にも変わらず抱き続ける、人々の花鳥、宇宙へ寄せる想いを見つめたいと思います。



-元々宇宙には興味があったのでしょうか?

野口宇宙飛行士の搭乗したクルードラゴン・レジリエンス号や、はやぶさ2プロジェクトについて知る機会がありました。
それまでは宇宙に対して漠然としたイメージしかありませんでしたが、科学技術者の純粋な思いや宇宙開発の進歩を知り、宇宙をより身近に感じ、大きく変わるであろう未来を想像するようになりました。
同時に、変化する時代にあっても、古来より変わらず抱き続ける平和への祈りを共に持ち続けていたいとの思いも強くなりました。
これまでは花鳥を描くことで、自ずと意識は過去〜現在に向いていました。
それが宇宙に視野が向けられたことで未来を意識するようになった気がします。
過去〜未来の時間軸を意識した作品を描きたいと思うようになりました。
行ったことが無い宇宙を描くというのは難しいなと改めて思いましたが、そういう意味では新たな課題も見つかったと思います。

 

-野口宇宙飛行士には、作品を贈呈されたのだとか。

はい。元々、私の地元である神奈川県茅ヶ崎市が野口さんの生まれ故郷でもあって。
野口さんの1回目の宇宙飛行が決まったときに、茅ヶ崎市がセレモニーイベントを企画されたんです。
市内の子供たちへ絵画作品を募集し、中学生だった私も応募したことがありました。
01s
(友田先生が中学生の時に応募した作品「宇宙への夢」)



画家として活動し始めてから絵描きとしてのルーツを確認しようと思い、当時、どんな作品コンセプトを私は提出していたのかなど、
15年以上前のことでしたが、もし記録が残っていたら教えていただきたいと、茅ヶ崎市役所に問い合わせました。
2019年6月のことです。
ちょうどその2ヶ月後に野口さん3回目のフライトを記念したイベントを開催するところで、
「初フライト時に絵を描いた中学生が画家になった」というエピソードが注目され、イベント出席、作品贈呈のお声がけをいただきました。
中学生の時はまさか自分が画家になるとは思っていなかったので、今思うと不思議なご縁だなと感じます。
どちらの作品も、人と自然の共生を願って描くというコンセプトです。
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(贈呈作品 「宇宙への夢」)

 

-今回は瑞獣の作品もありますね。

友田恵梨子4P葦亀
「蓑亀」P4

はい。幻獣は、普段の生活で深く意識するわけではありませんが、これらは長い歴史でしか培われない意識や美、祈りの象徴もあります。
そのような存在があることを節目節目に感じていたいと思い、描くようになりました。
例えばこちらの作品、「蓑亀」は古くからさまざまな文学作品や芸術作品に記述が見られ、長寿を象徴する縁起のよいものとされています。

 

-今回の作品の中で特に見てほしいという作品を教えてください。

どれも思い入れのある作品なのですが、
今回の個展のテーマにもなっているDM掲載の作品「祈り紡ぐ」や「Resilience」をご覧いただけたらと思います。

友田恵梨子M12祈り紡ぐ
「祈り紡ぐ」M12

3本の光の筋は過去、現在、未来へと紡がれる人の想いを表しています。
鳥は古来より吉兆をもたらす幸運の守り神として、人々は想いや祈りを託してきました。
今を生きる者としての視点で、過去~未来へと想いを馳せ、祈り託して描きました。


友田恵梨子P15Resilience
ResilienceP15

民間企業の宇宙参入という歴史的転換期。
2020年11月16日、NASAより民間機初となる宇宙船クルードラゴンが国際宇宙ステーションへ向けて飛び立ちました。
世界的大混乱に見舞われた年に飛び立ったこの宇宙船には「立ち直る力、柔軟性、復活への祈り」を込められて「レジリエンス」と命名されています。
この作品は、レジリエンス号の旅立ちの日に描きあげた作品です。
現在を生きて感じる、不安や恐怖、困難に柔軟に立ち向かいたいと祈りながら描きました。
レジリエンス号のクルーは白人、黒人、女性、そしてアジア人と、多様性を感じられます。
個人のバックグラウンドによって思い描かれるドラゴンも多様だろうと考え、東洋思想から生まれた龍を描きました。
白龍はどの色の龍より速く飛ぶ事ができるそうです。
また、画題としてよく手に宝珠を持つ竜が描かれます。
諸説ありますが、天界へ行き、宝珠を手にすることが出来た龍だそうです。
これから向かう先で宝を掴むために、龍の手には何も持たせませんでした。
そして表情は凛と前を向き、穏やかさとしなやかさを纏うように描きたいと思いました。

 

-今後新たに挑戦したいことはありますか?

今は思考を描き表すことに比重を置いていますが、徐々に思考の輪郭が掴めてきている実感があるため、
引続き明確なテーマを持たせた作品の発表や、それを文字にすることと、よりその思考の表現を洗練させるために、
画力を鍛えて表現の幅を広げていきたいと思っています。

 

-最後に、個展を見て下さる皆さまに一言お願いします。

このご時世の中、お越しくださいまして誠にありがとうございました。
私は「祈り」という言葉をよく使いますが、「明日は、もっと良い日になりますように」といった、誰しもが抱くごくささやかな願いの感覚で描いています。
この会場で、少しでも心穏やかにご覧いただくことができましたら幸いでございます。

 


友田先生、ありがとうございました!

個展は1月8日(金)~17日(日)まで開催いたします。

新作10余点をこの機会に是非ご高覧くださいませ。




前回のインタビューはこちら↓

友田恵梨子インタビュー2019 : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)

「友田恵梨子 日本画展 -祈り紡ぐ-」
1月8日(金)~1月17日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:友田恵梨子
作家来場日:1月8日(金)・9日(土)・17日(日) 13:00~17:00

草花の煌めきや移り行く季節の鳥たちの生活を描き出す友田恵梨子。
友田が作品に使用している因州和紙(伝統的工芸品・鳥取県指定無形文化財)は、約1300年という時を経て今に伝わっています。
今回の展示では、古来、現在、未来へ紡がれる人々の願い、祈りに想いを馳せながら描いた作品を展示いたします。
古来より、人類は人知の及ばぬ自然に畏怖の念を抱いては煌めく星で世を占い、闇夜に浮かぶ月に様々な思いを重ねました。
そして手の届かぬ天(宇宙)の光に導かれ、祈りを捧げてきました。宇宙との距離がかつてないほどに縮まった今。
そして宇宙へ進出して行こうと、これからも受け継がれる人々の想い・祈りを心に留めていたい。
そんな想いが込められた作品たちとなっております。
GallerySeekでは約2年ぶりとなる個展をこの機会に是非ご高覧下さいませ。


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友田恵梨子

友田恵梨子

足元の名も知らぬ花も虫もこの壮大な宇宙に存在する一つの命であると思うと愛おしさが深まります。 長い時を経て自然の中から生み出された、人の感性と技の宿る和紙や古の人々の歌に、人と自然が紡いできた絆のようなものを感じます。 草花、鳥、宇宙、万葉歌に導かれながら、この美しさが永久に続いて欲しいと祈り描きます。