明日1月20日(水)より、大阪あべのハルカスにて個展を開催される山田さやか先生。
大阪では初個展ということで制作や作品についてお話をお聞きしました!
–制作のコンセプトを教えてください。
「現実との境目」をコンセプトに制作しています。
現実と〝何〞の境目なのかは、明確な言葉では言い表せません。
夢の中のような空想の世界だったり、目に見えていないだけで実際に存在しているかもしれないそんな空間だったり…。現実との〝狭間〞のような部分を描いています。
–なぜ「現実との境目」をコンセプトに制作されるようになったのでしょうか?
私は昔から毎日のように夢を見ていました。
不思議な夢はもちろんのこと、現実との区別がつかなくなる程リアルな夢を見ることも多くありました。
そうした現実と夢の世界の曖昧さに疑問を持ったことがきっかけです。
実際に目に見えているだけのこの現実が、本当に全てなのかとよく考えるようにもなりました。
その後、習い事として入会した絵画教室で細密鉛筆画との出会いがあり、昔からイメージしていた夢なのか、現実なのか、はたまた別の空間なのか、という曖昧な世界を絵で表現したいと思うようになりました。
現在でも夢は見るのですが、起きた時に絵を描くきっかけになりそうなものはすぐメモするようにしています。
夢の中で観たままの風景というより、感じた雰囲気やイメージを絵に加えるという方がしっくりくるかもしれません。
リアルなものとその空気感を組み合わせて描く感じなので、私のイメージするこの空間を表現するには、リアルな部分はよりリアルに描くことが何より大切だと思っています。
「知らない部屋」F3
こちらの作品も、いつかの夢で見たことがあるような部屋を描きました。
香りは忘れていた記憶を呼び起こすような気がします。まるで薔薇の花びらが次々に開いていくように…。
–作品のインスピレーションは元々は夢がきっかけとお話しされていましたが、描くモチーフによって違ったりするのでしょうか?
夢もありますが、そこから物であれば、その物に記憶があったなら…とイメージしたり、背景に物語を想像したりしています。
夢と実際の物を頭の中で組み合わせたり…。
花の場合だと花びらや、その花の持つ雰囲気や表情を感じとってそこからイメージを広げます。
「酔芙蓉」F6
こちらは酔芙蓉という花がモチーフです。
この花は朝には純白のように白色の花ですが、昼から夜にかけてお酒に酔うように少しずつ紅色に染まっていいきます。
恋焦がれる女性のイメージと重ねています。
酔芙蓉の中に女性の心があるのか、女性自身が酔芙蓉と自分の恋心を重ねているのか、曖昧なニュアンスを描きました。
–今回の個展のテーマを教えてください。
今回の個展のテーマは「終わりのない瞬間」にしました。
瞬間とはごく短い間、一瞬の意味を持つことから、終わりのない瞬間とは矛盾を感じる言葉だと思います。
私の表現したい世界は、時間軸すら一定としていないような現実との境目にある空間です。
音の無い静かな状態がいつまでも続いていくような、空間に入り込んでいく、その瞬間の1シーンのように感じていただけたら嬉しいです。
–作品のどこを一番見て欲しいか教えてください。
細部への描写でしょうか。
不安定で不確かな狭間。
対峙する現実をより浮き彫りにするため、表現したいものを明確にするため、どんなに時間がかかっても、細部への描写には妥協はせず、突き詰めて描くことにこだわっています。
–「錯覚の庭」M20は、イスの装飾・その影の描写が特に繊細ですね。
構図も不思議な感じがします。
ありがとうございます。
とても手入れのされた美しい庭で、私はガーデンテーブルとイスの創り出した装飾の様な影に惹かれました。
そしてそこに吸い込まれるような不思議な美しさを感じました。
その時の心情によって、何を主とし美しいと思うのかは自由でいい、全てが錯覚だとしても現実と空想の境目で遊ぶように、色々な視点から目の前にある空間を楽しみたい、そういう意味を込めて影に焦点を当てた構図にしました。
「錯覚の庭」M20
–作家を志そうと思ったのはいつ頃ですか?
高校卒業後、普通の会社員として働いていたのですが、趣味のひとつとして始めようと思い、
先程のコンセプトのお話に出ていた絵画教室に通いました。
通っていくうちに、段々楽しくなってきて、自分は小さいころから絵を描くことやっぱり好きだったんだなと思い出しました。
本格的に作品制作を意識し出したのは、今から5〜6年前です。
–制作手順を教えてください。
支持体はKMKケント紙が貼ってあるイラストレーションボードです。
紙は色々と試しましたが、パネルに水張りをすると目が粗くなるため、細密に描写するには現在の支持体が一番合っています。
パネルに水張りは、水を含ませて膨張させることによって一度紙の目が広がり、乾くと目は縮まるのですが、その過程で最初に作られていた繊細な目に戻らなくなります。
目が粗くなることで穴の開いた凹みの部分に鉛筆が入り込まなくなるので繊細さが失われるように感じます。
使う画材は、鉛筆(ハイユニ・mono100/6B~3H)です。
Mono100の方が若干硬く、黒が濃く出るので題材の質感などで使い分けています。
後は、練ゴム・鉛筆タイプの消しゴム・さっ筆です。
作品によっては部分的に色を入れることもあります。
最近ではよくパンパステルを使用しており、水彩絵具も使うこともあります。
パンパステルは、少ししっとりとしたパステルです。
色鉛筆だと粒子が粗いので鉛筆よりザラザラした印象になるのですが、パンパステルだと硬めの鉛筆よりも更に細かく、パンパステルの上に鉛筆をのせることも可能なので非常に相性がいいと感じています。
パンパステルを薄くのせることで紙の目の間に色が入り、より一層繊細な描写になるので気に入っています。
また、白い部分を紙の白さより少し白くできることと、少しではありますが長期間日光に当たってしまった場合の紙焼けの予防になるかと思い使っています。
①下書き
画像の通りとても簡単にメインとなる題材を紙に傷をつけないよう尖らせていない柔らかめの鉛筆でデッサンします。
モチーフと向き合う時間が長いと最初の印象と感じるものが変わってくることもあり、考えていた構図から背景や表情・雰囲気も変えることがあるので簡単にしています。
修正が効く鉛筆だからこそできることだと思います。
あまりにも消しては描いてを繰り返すと紙も痛むので、大幅に変更することはありません。
②描き込み
資料として撮影した写真を参考にしながら描き込みます。
写真そのままに描く訳では無く、人物画であれば何十枚という写真を参考にしがら自分の描きたい表情やイメージを部分部分引き抜きながら頭の中で構成していきます。
顔を似せることよりも、表現したい空気感を優先しています。
③背景を描く
モチーフとのバランスを見ながら背景を描いていきます。
紙を保護する目的で真っ白な背景の場合にはパンパステルの白をのせています。
④完成!
全体のバランスを調節し、フィキサチーフをかけて完成です。
–技法の中ではどんなところに一番こだわりを持っていますか?
さっ筆や練ゴムをうまく使いこなすことでしょうか。
緻密に描くにはテクニックより丁寧に時間をかけて描くことが何より大切だと感じています。
–影響を受けた作家・作品を教えてください。
影響を受けた作家や作品は特に無いと思いますが、幼い頃はサルバドール・ダリの作品が好きだったことを覚えています。
–作家として最も大事にしている心構えを教えてください。
決して折れない、妥協しない、でしょうか。
立ち止まっても自分のペースで進んでいけば見えてくるものがあると思っています。
–山田先生にとって絵を描く事はどういった行為でしょうか。
私にとって絵を描くことは当たり前の日常だと思っています。
–今後の夢や目標を教えてください。
制作していて一番に思うのは、たくさんの方に私の絵を観てほしいという気持ちです。
いつまでも活動を続け、私の絵に興味を持ってくだる方がこれからも増えていき、発表の場が広がっていくことが目標であり純粋な気持ちです。
–最後に、作品を観に来て下さる皆様に一言お願いいたします。
小さな頃から絵を描くことが大好きで、特に中学生の時に授業で初めて鉛筆デッサンをした時の楽しかった記憶が今に繋がっています。
なぜ鉛筆という画材で描くのかと尋ねられることがあります。
理由はいくつかありますが、根本がその鉛筆デッサンにあることと、私の表現したい世界があまり色の無い鉛筆の質感をまとったような静かな空間だからです。
現実的な情景の中にある違和感の様なものや、現実と幻想が交わったような少し不思議な空気感を表現できたらと思っています。
大阪での展示は初めてなのでとても楽しみにしております。
このような状況下ではございますがご覧いただけましたら幸いです。
山田先生、ありがとうございました!
個展は1月20日(水)~1月26日(火)まで開催しております。
大阪での初個展、この機会に是非ご高覧くださいませ。
「山田さやか -終わりのない瞬間-」
1月20日(水)~1月26日(火)
会場:あべのハルカス近鉄本店 タワー館11階 アートギャラリー
出品作家:山田さやか
山田さやかは、「現実との境目」をテーマに鉛筆画によって作品を制作しています。幼少期より絵を描くことが大好きで、社会人として働きながらも絵画教室に通い、その想いが再燃しました。理想とする色の無い鉛筆の質感をまとったような、静かな空間を表現する為に、鉛筆画という技法にこだわりを持つ彼女。現実と夢の中のような空想の世界だったり、目に見えてはいないだけで
実際には存在しているかもしれない。そんな不安定で曖昧な「境目」は、時間をかけて描写された細部への表現によって追求されています。あべのハルカスでは初めての個展となる今回は、「終わりのない瞬間」をサブタイトルに作品をご紹介いたします。瞬間とは、ごく短い間一瞬の意味を持つことから、終わりのない瞬間とは、矛盾を感じる言葉です。時間軸すら一定としていないような現実との境目にある空間や、音の無い静かな状態がいつまでも続いていくような空間に入り込んでいく、その瞬間の1シーンを是非お楽しみくださいませ。