豊澤美紗インタビュー2021

8月6日より個展を開催する豊澤先生にお話しを伺いました!

■「郷愁ー街と給水塔とこけしー」

「郷愁ー街と給水塔とこけしー」もう1年半以上故郷に帰れず、郷愁を覚えることが多くなりました。今回の個展では思い出の中の風景と、今見ている風景を、ガラスの持つ儚さに重ねて表現しました。

 

■「空とこけし」「給水塔」

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「空とこけし-風-」
故郷の郷土玩具、「こけし」がモチーフです。体と頭はビル、顔の部分は空です。目を閉じて祈っているようなイメージです。

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「給水塔02」
給水塔は、団地などの集合住宅に水を供給するための設備です。現在は技術の進歩により役目を終え、建物の立て直しとともに姿を消しつつあるそうです。街を見守っているようにも感じられる存在が次々と消えていくことを、ガラスの儚いイメージに重ねて製作しました。

■制作過程

①まず粘土などで形を作る
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②シリコンをとって、凹型を作る
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③ワックスを流し込み、原型と同じ形を作る
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④形の細部を整え、金属箔を貼ったり、彫刻したりする
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⑤耐火石膏を流して型をとる
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⑥型ごと蒸気で熱し、ワックスを溶かし出す

⑦型を乾燥させる
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⑧ガラスを詰める
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⑨電気炉で800度台まで熱してガラスを溶かす

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⑩時間をかけて冷まし、型を壊す
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⑪できたガラスを削ったり磨いたりして仕上げる
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■新しい試み
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金属箔は以前は銅を用いていましたが、銀箔も使うようになりました。ガラスとの反応により、予想のつかない色が出るので面白いです。作品に顔がついたのは初めてです。自画像の要素が出てきた気がします。

 

■壁掛け作品ならではの良さと課題

立体作品の世界観をより膨らませられたらと思い、壁掛け作品も制作しました。立体作品では周囲の状況などは作らないのですが、壁掛け作品では遠景の表現となるため、イメージがより広がるように思います。ガラスでも壁掛けできると飾りやすいという点もあります。

ガラスを用いると、透明感があるのに絵の具にはない重量と厚みと、技法による制約などもあり、なかなか思う通りにはいかないところです。壁掛けにした際の安全性も考えると理想の見せ方は難しく、今後も課題としたいところです。壁掛け作品では、液体が固まって形を作っているような独特の表情が面白いと感じる一方で、ガラスが落ちないように固定するのは工夫が必要です。なるべく見え方を損なわないような方法を考えています。

 

■ガラスの魅力

ガラスの魅力は表情の多様さです。高温で溶かすと水飴状に流動的になり、溶けるときに空気に触れていた面は美しいツヤが出て、型に触れていた面はくもりガラスのような柔らかい質感になります。また、金属を入れると色が様々に変化します。光の状態によっても変わるガラスの表情は予想のつかない魅力があると思います。

 

■最後に一言

この度はありがとうございます。作品が何かのきっかけになれば幸いです。

豊澤先生ありがとうございました!
個展は8月6日(金)~8月15日(日)まで開催しております。
この機会に是非ご高覧くださいませ

「豊澤美紗 郷愁 -街と給水塔とこけし-」
8月6日(金)~8月15日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:豊澤美紗
作家来場日:8月7日(土)・14日(土) 各日13:00~17:00

現代を生きる中で感じたこと、そこから生まれる空想の世界などを、ガラスの素材が持つ魅力と掛け合わせながら表現するガラス工芸家、豊澤美紗。ガラスは制作工程によって様々な表情を見せてくれます。高温で溶かすと水飴状に流動的になり、溶けるときに空気に触れていた面は美しいツヤが出て、型に触れていた面はくもりガラスのような柔らかい質感になります。また、銅を入れると色が赤や青に変化します。今回の個展では、そんな多彩なガラスの魅力を引き出しながら、これまでのシリーズに加え、豊澤の故郷である東北の工芸品「こけし」をモチーフとした新作をご紹介致します。近年、中々故郷に帰れず、郷愁を覚えることが多い時代です。故郷の工芸品をモチーフとし、思い出の中の風景と、今見ている風景を、ガラスの持つ儚さに重ねて表現した作品は感慨深いものがあります。この機会に是非ご高覧くださいませ。

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豊澤美紗

豊澤美紗

現代を生きる中で感じたこと、そこから生まれる空想の世界などを、ガラスの素材が持つ魅力と掛け合わせながら表現したいと思っています。ガラスは制作工程によって様々な表情を見せてくれます。高温で溶かすと水飴状に流動的になり、溶けるときに空気に触れていた面は美しいツヤが出て、型に触れていた面はくもりガラスのような柔らかい質感になります。また、銅を入れると色が赤や青に変化します。多彩なガラスの魅力を引き出しながら、見る方が空想を膨らませられるような作品を目指して制作しています。