金子琢磨インタビュー2021

現在、Gallery Seekでは約6年ぶりの個展となる金子琢磨(カネコタクマ)先生。

自身のことや作品についてお話をお聞きしました!
制作風景


-作品のコンセプトを教えてください。

私は、現場での制作を基本としています。
時間の移ろいにより、ものの色を様々に変化していく風景の、その一瞬の空気や光を自分の印象で表現していきたいと考えています。
海外への制作紀行の間、現場にて油彩画を描き溜めていきます。
一回の紀行で2、3の地域を拠点にそれぞれ滞在し、車で移動して良い場所を探す様な形です。
風景に対峙した時の感覚や、光の移ろいなどを捉える事を大切にし、作品を完成させることもあれば、それらを元にアトリエで想像を膨らませ、更なる大作などを描くこともあります。
4号~6号くらいまでの小品は現場で完成させる事が多いですね。


-なぜ現場での制作にこだわるようになったのでしょうか?

実物は映像とは異なります。
色々な場所に出歩く事が好きだったので自然と風景画で現場主義になりました。
ずっとアトリエで描いているよりも、自分の足で歩いて、綺麗なものを見たいなって。
あとは、学生時代に習ってきたことが、実物を見て描くのが基本だったので自然とそうなりましたね。
題材も人物を写実的に描いたり、色々とやりましたが、その中で風景画のコースがあって、そこからの応用ですね。 
制作していると、時には虫が飛んできたり、気象条件が違ったり、冬場は雪が降っていて寒かったり夏場は暑かったりと大変な時もありますが…(笑)
でもそういった環境でしか得られない・感じられない部分があるのでそこは大切にしています。
そういった経験は、絵画表現に奥行きを生むことが出来ると思っています。


-今回の個展のテーマを教えてください。

現在、私たちの国を含めた世界の国々は、長い歴史の中で大きな変化の時期にあります。
私が学び、その風土に魅せられた地であるイタリアは、歴史を通し、様々な変動を経ることで生み出されてきた多様な魅力があります。 
これまでも、この先も風景は常に時と共に変化し、留まることはありません。
こうした潮流の中で、私自身さまざまな思いを刻んできました。
そんな想いを込めた日本の現場風景・イタリアの光の記憶の風景を発表いたします。
一言では言い表しにくいですが、それぞれの作品画面に想いがあります。
絵画を見る人がそれらの何かに共感したり、発想を広げてもらえれば嬉しいです。


-今回の出品作も、海外と日本の風景両方を描かれていますが、描かれている時の意識の違いはあるのでしょうか。

自分の中では、意識分けをしている感覚はないですね。
ただ、日本と海外だとなんというか、そこにいる時の自分の気持ちは違うと思います。
イタリアは空気感、同じような景色でも陽ざしの光の色が日本とは違います。
あとはやはり当たり前ですが、喋ってる時の言葉の変化ですかね。
話しかけてくる人の数も違います。
日本だと静かに制作する事が多いですが、海外は絵描きに優しいですね(笑)
60M アミアータ山を望む場所 トスカーナ
「アミアータ山を望む場所 トスカーナ」M60

例えばこちらの作品は、イタリアのトスカーナ地方オルチェ渓谷にある、古城から望むアミアータ山の景色です。
朝日の当たる壁面の光と、影から遠く続くトスカーナの丘陵。
今回の個展のテーマでもある流れる歴史とその地の風土・自然を描きました。
4F モンテキエロの街角
「モンテキエロの街角」F4

こちらの作品、「モンテキエロの街角」はトスカーナ地方モンテキエロの町の一角、昼下がりの景色です。
石造りの壁に当たる日の光が柔らかに輝いていました。
イタリアは学生時代に住んでいた思い入れのある地ですし、描いていきたいなと思う場所ですね。
自分の生き方に通ずる部分も現地の人に感じたり。
4F 銀杏の道
「銀杏の道」F4

日本の風景も様々な場所を描きます。
「銀杏の道」は私の住む、信州安曇野の秋の景色です。
色づく北アルプスの山肌を背に、黄金色に輝く銀杏の木と、道に伸びる青空を映し伸びる影が印象的でした。
信州はここから長い冬を一足先に迎えます。
安曇野は昔から住みたいと思っていた土地でした。
近くには高原や林檎畑なども多く、気ままに散策して、惹かれた風景を描いています。
景色や気温だけでなく、鳥や虫の鳴き声が季節ごとに変化を教えてくれます。


-金子先生が作家を志そうと思ったのはいつ頃ですか?

大学在学時代です。
美術部に入り、絵に傾倒してしまい進路を変更しました。
本格的に絵を描き始めたのはその頃からですね。
アメリカの大学に行った後、2年間イタリアのThe Florence Academyで油彩画を勉強しました。
最初はデッサンだったり彫刻だったりエッチングとか、様々な分野を一通りやりましたが、古典絵画が好きだったのもあり、油彩で方向性が定まった感じですね。


-技法の中でどこに一番こだわりを持っているか教えてください。

最近は技法に拘ることなく、これまで得てきた描き方をベースに、どのように表現するかを探求しています。
今回はイタリア作品から派生したものも出品していて、「ベニス 輝く運河」など河の水の表現を工夫しました。
写実的ではないかなと自分では思っています。

4F ベニス 輝く運河
「ベニス 輝く運河」F4

日の光が水面に映り輝いており、水気を含んだ空気を印象的に描きました。
ベニスの広い運河から望むサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の景色です。


-影響を受けた作家・作品を教えてください。

レンブラント、コロー、マキアイオーリ、モネ、サージェント、レヴィタンなど。
レンブラントなんかは陰影の表現やドラマチックさの演出が好きですね。
あとは筆づかい、色づかいとか…。
コローなんかも風景画なので昔から好きでしたね。
基本ですが光をちゃんと描くという、現場で。


-作家として最も大事にしている事は何でしょうか。

描き続ける事だと思います。
そのために必要なことを揃える努力はしなければいけないと思います。


-金子先生にとって絵を描く事はどういった行為でしょうか。

自分にとっては、世界の人々と言葉ではない部分で繋がることの出来る方法だとも考えています。


-今後の夢や目標を教えてください。

描く日々を積み重ね其処から何かを掴めることを願っています。


-最後に、作品を観に来て下さる皆様に一言お願いいたします。

去年から40代となり、これまで様々な描き方などを試して来た作品にも、ある程度方向性を見出し始めたと感じてきています。
未だ試行錯誤は続きますが、自身の軌跡と、これからの作品を楽しんでいただければと思っています。

 

金子先生、ありがとうございました!
個展は3月5日㈮~14日㈰まで開催いたします。
この機会に是非ご高覧くださいませ。




「金子琢磨 油彩画展 -光と空気の風景-」
3月5日(金)~3月14日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:金子琢磨

その場の空気や光を現場主義で描き出す洋画家・金子琢磨。
東京理科大学を中退後、本場の西洋画を学ぶ為アメリカへ渡り、本格的な絵描きの道へと進みました。
現在、私たちの国を含めた世界の国々は長い歴史の中で大きな変化の時期にあります。
今回の個展では、彼が学び、その風土に魅せられた地であるイタリアや、日本の風景を中心に展示いたします。
歴史を通し、様々な変動を経ることで生み出されて来た風景には魅力があります。
それらはこれまでもこの先も常に時と共に変化し、留まることはありません。古典的な描き方でありながらも、
彼の作品には行った事がないのに行った事のあるような、不思議な懐かしさを感じることがあります。
時代の流れの中で、様々な思いが刻まれた新作10余点を是非お楽しみくださいませ。

 

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金子琢磨

金子琢磨

時間の移ろいにより、ものの色を様々に変化していく風景。 その一瞬の空気や光を自分の印象で表現していきたいと考えております。   金子琢磨 HP http://www.takumakaneko.com/