8月27日よりGallery Seekにて個展を開催する米村先生にお話しを伺いました! 今回の個展では米村先生の新シリーズ「MEISAI」をご紹介いたします。 ■MEISAI 「周囲に埋もれる不安感」と「周囲に埋もれることで得られる安心感」。 溢れる情報や価値観に翻弄されながら、アンビバレンスを抱える現代人を、様々な色に埋もれる姿に置き換えて描きました。 「MEISAI-06」M8 ■制作過程 ①パネルに綿布をはり、アクリル絵具で下地をつくる ②下描き、一層目の描写(完成形に必要な色を考えながら置いていく) ③二層目の描き起こし(下描きはほとんど見えなくなり、画面上でのやりとりが主になる) ④壊す(偶然性や新しい印象をつかむきっかけを期待し、画面全体、または部分的に不透明の絵具をかける) ⑤三層目の描き起こし(壊した画面を生かしつつ、画面を再構築する。また細部の描写をはじめる) ⑥仕上げ(色調を整えたり、細部を描き込みつつ完成に向かう。) ■MEISAIシリーズを描くきっかけ 2019年に開催した佐賀県での個展で、それまでずっとやっていた「刻の流れ」をテーマにしたシリーズがひと区切りした気がしました。 当時、自分の置かれた状況がひと区切りしたというのもあったかもしれませんが、割と自然に新しいテーマに取り掛かろうと思えたので、 今一度、世の中や自分自身を見つめなおしてみるきっかけになりました。 「刻の流れ」シリーズ:「蒼の刻」SM 「刻の流れ」のシリーズは、継続して続けていくつもりなので、せっかくなら使う色や作品へのアプローチに変化を持たせたいという気持ちがあったことも大きいです。 以前から周りの反応や顔色を意識しながら、なんとなく空気を読むことを強いられている現代人の姿を描きたいという気持ちはありましたが、 昨今のコロナ禍の情勢や、それに関する情報に振り回され、ギスギスし始めている様子も相まって、このテーマで作品を作ることにしました。 また、自分の作品でアクリル絵具と油絵具を併用することが増え、改めて、違う種類の画材を画面上に並べてみて際立つ、それぞれの素材感の違いの面白さに気づかされました。 アクリル絵具ならではの流動的かつ硬質なマチエルと、油絵具ならではの厚みと粘りのあるマチエルを見せられる作品にできないかと思ったことがきっかけです。 なかなか思ったようにはうまくはいかないのですが、試行錯誤の余地があってワクワクします。 「MEISAI-10」P4 ■表情ににじませるテーマ どの作品も表情はポイントかもしれません。 作品のテーマにもしている、大衆に埋もれることの居心地の良さと悪さを、あまりお大げさにはしていませんが、表情としてにじませたつもりです。 居心地の良し悪しは人それぞれなので、表情を大げさ(明確)に描いて、居心地の良さと悪さの白黒をはっきりさせてしまうことは避けたかったということがあります。 「MEISAI-09」SM ■MEISAIシリーズならではの鮮やかな色の組み合わせ 今回の個展に出品している作品では、色ごとに具体的な意味を設定するということはしていませんが、 例えば相反性と言いますか、アンビバレンスの象徴として、寒色と暖色を一緒に使ったものはあります。 私自身がこのシリーズの可能性を探っている段階なので、今はただ、以前の作品よりも鮮やかな色を積極的に使えることが嬉しく、 様々な色の組み合わせを楽しんでいます(笑) 今後、色に具体的な意味合いを持たせる作品も、描いてみたいと思います。 「MEISAI-02」S4 米村先生、ありがとうございました! 個展は8月27日(金)~9月5日(日)まで開催しております。 以前のインタビューはこちらから ◇2010年インタビュー 米村太一作家インタビュー : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp) ◇2020年インタビュー 米村太一インタビュー2020 : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp) 「米村太一 油彩画展 -MEISAI-」 8月27日(金)~9月5日(日) 会場:Gallery Seek 出品作家:米村太一 刻の流れをテーマに、そこに存在するもの達を、時に儚げに、時に優雅に描く米村太一。 今回の個展では、昨年より取り組んでいる新シリーズ、「MEISAI」をご紹介致します。 シリーズの特徴といえる様々な色に埋もれる人物の姿は、世の中に溢れる情報や価値観に翻弄されながら、 「周囲に埋もれる不安感」と「周囲に埋もれることで得られる安心感」のアンビバレンスを抱える現代人を表現しています。 MEISAIシリーズは作品そのものの「物理的な存在感の強さ」に意識を置いたシリーズでもあり、表面の凹凸や、 意識的に平滑にしたようなマチエル、絵具が持つとろみのある質感などを際立たせることで、 描かれたものとはまた別のベクトルでも美しさを見出しています。作家渾身の新シリーズの数々を是非ご高覧くださいませ。