石谷雅詩インタビュー2020

7月10日(金)より個展を開催される石谷雅詩先生。

お話をお聞きしました!

-今回の個展のテーマを教えてください。

今回は動物と風景にモチーフを絞って制作しました。

円形作品にも挑戦しています。

 

-以前から変形作品は描かれていましたが、円装は今回初めて見ました。

円装に挑戦するきっかけになったのは、実は人からの提案です。

自分の個展を開催するにあたって展示内容を相談している中で、メインを円形にしてみてはどうかと。

直感で「やってみたい」と思ったので引き受けましたが、思いのほか自分でも気に入ってます。

シャープで硬質なイメージを僕の作品に持たれる事も多いと思うのですが、円形にすることで、随分柔らかくなる気がしています。

「列」円装30号
-サブタイトル「記憶の奥」の意味を教えてください。

僕が実際に見た風景や動物の記憶を、視覚的要素だけでなく、音・匂い・呼吸・温度・時間など、深く呼び起こしながら作品にしたいと思っています。

そんな想いをサブタイトルに込めました。

-作品のインスピレーションはどこから生まれてくるのでしょうか?

あれこれたくさん考えますが、直感もすごく大切だと思っています。
「あ、これ描きたい」と思えた偶然の出会いは大切にしたいです。

 

-その中では、今回の出品作「休息」4Fは初めて見るモチーフですね。

京都の扇形車庫との事ですが、何故こちらをモチーフに?

列シリーズもそうですが、同じ形のものが連続して連なる状況に、惹かれるところがあります。

数年前に台湾での個展中に取材した扇形車庫に初めて感銘を受け、いつか描きたいと長年思っていました。

モチーフの形もそうですが、風景の色合いも自分の世界感とマッチするような気がしたし、当時のこの時代への憧れもあります。

今回初めて挑戦してみました。

「休息」M4
-動物と風景で、制作する際の意識の違いなどはあるのでしょうか?

動物と風景の違いというより、モチーフとの距離感の違いはあるかもしれません。

風景や群れた動物がテーマの「列」シリーズは、遠くから傍観しているような意識です。

それに対して一匹の動物を描く時は、その動物と対話するような意識がある気がします。

ただ、どちらにせよ自分の記憶にある映像がモチーフですから、自分自身を形にしている事に変わりはないのかもしれません。

「霧中夢」円装3号
本当は安定を得たいけど、自然はそうさせない仕組みになっています。

虹が灯ったり、月星が光ったり、活動している。

安定を求めて、安定したいから動き回っている。

何かを求めて動くから生命力が湧いてくる。

 

物事は全てバランスだと思っていて、かといってバランスが取れすぎるのもつまらない。

シーソーのようなもので、あちらこちらへ倒れながらもバランスを取ろうとしていくことが面白いのかな、と。

そんな事を考えながら日々制作しています。
-制作されてきた中で心境の変化はありましたか。

制作に限らず、何がどれだけ必要で何がどれだけ無駄なのか、という事をよく考えるようになりました。

 

-考えるきっかけなどがあったのでしょうか?

考える事やそのきっかけは色々あるのですが、特に今回のコロナウイルスのための緊急事態宣言による自粛期間中は思うところがありました。

予定していた展覧会は無くなり、副業の講師業も休業。

不要な外出はできないので二ヶ月本当に引き篭もりでした。

でも逆に、外出しない事で一枚の制作にじっくり時間をかけることができ、一つ一つの工程をマイペースに進めることができたんです。

どれだけ今までの自分が〆切に追われ、マイペースを犠牲にしてきたのかを冷静になって考えることができました。

マイペースって僕にとって、とても重要なことなのですが、時間の使い方をもう一度見直そうと考えるようになりました。

 

-作品の変化はありましたか。

そうした心境によって作品がどんどんミニマル化してきた気がします。

その結果、より絵が静かになり、そして自分らしくなってきたと感じています。

 

-色数が減り、以前とはまた違った種類の静謐な雰囲気になられたように感じます。

色数が減ってきた事によって一色一色に更にこだわるようになりました。

そのため、絵の具の重ね方、厚みにも気を使うようになりました。

緊張感と言うのでしょうか。将棋を指すような思いで制作しています。

「列」WSM
-今後、新たに挑戦したいことはありますか。

絵画の基礎はデッサン、という原点を再確認しました。

今後、デッサンに更に力を入れて新作に挑戦していかなければと思っています。

時間の使い方の話だけでなく、日本画制作においても必要と無駄を突き詰めなければいけないと思っています。

 

-原点にかえったのは何故でしょうか?

日本画の画材は油絵と違って、上手くいかなかった仕事を修正する事が難しいです。

修正してもその仕事の痕跡が残ってしまうことが多く、だからこそ計画性がすごく必要になります。

その日本画制作をする過程で一番計画の確立をされるのが、本画と同サイズの下図(大下図)だと思います。

この大下図をどれだけ作りこむか、が問題です。

僕は飽き性なところもあるので、下図で張り切りすぎると本画で力尽きてしまう気がしていました。

でも今回の自粛でじっくり制作に向かったことにより、大下図の重要性をまだまだ甘く見ていたと自覚しました。

大下図は漫画家で言うとネームにあたります。

大抵の漫画家さんはラフに仕上げると思いますし、僕もそんな感じでした。

でも僕の場合は下図を「鉛筆画の作品」と言える段階まで詰める必要があるかもしれません。

かといって直感的な仕事も必要だと思うのでバランスが難しいですが…。

これからその答えを探す挑戦をしようと思っています。

自粛中にアマビエの鉛筆画を描いた時も、それを下図として日本画にしてみたくなりましたね。

 

-最後に個展を見て下さる皆さまに一言お願いします。

このようなご時世の中ご来場頂き本当に有難うございます。

芸術は、人類が生き残る為の大きな力になっていると信じて今まで絵を描いて来ました。

僕の作品たちによって生まれた会場の空気感を、ギャラリーのイスに座って、ゆっくり感じていただければ嬉しいです。

まだまだ微力ですが、僕の作品を観ていただいた方々の助けに少しでもなれたらと願っています。

石谷先生、ありがとうございました!

個展は7月10日(金)より開催いたします。

この機会に是非ご高覧くださいませ。

過去のインタビューはこちら↓
http://blog.livedoor.jp/soratobu_penguin/archives/8729376.html

「石谷雅詩 日本画展-記憶の奥-」

7月10日(金)~7月19日(日)

会場:Gallery Seek
出品作家:石谷雅詩

作家来場日:7月10日(金)・17日(金)・18日(土)・19日(日) 各日13時~17時

愛知県立芸術大学で日本画を学び、院展で発表を続ける石谷雅詩。主に動物をモチーフとし、光と闇の表現により、現実と夢の狭間の様な、静謐な世界観を描き出します。「本当は安定を得たいけど、自然はそうさせない仕組みになっている。虹が灯ったり、月星が光ったり、活動している。安定を求めて、安定したいから動き回っている。何かを求めて動くから生命力が湧いてくる」そんな風に考えながら制作しているという作品たちは、鑑賞者に心地よいリズムを感じさせてくれます。GallerySeekでは初個展となります。ぜひこの機会にご高覧賜りますようご案内申しあげます。