疋田正章インタビュー2021

6月25日より個展を開催する疋田正章先生にお話しを伺いました!

■「瞳に宿る物語」

今回は、サブタイトルに「瞳に宿る物語」と付けさせて頂きました。
猫の瞳の中に、それぞれの物語が宿るようにとの想いで、制作しました。
実際の猫の瞳は、虹彩や瞳孔の表情が、時間や角度によって様々な変化を見せ、それはとても神秘的で
吸い込まれそうになります。
鑑賞者の方々が、作品に描かれた猫の瞳の中にどのような物語を観るのか想い想いに感じ取って頂けると嬉しいです。

■制作過程

今回ご紹介する「ひな」という作品は、大分県の深島で取材した猫をモデルにしました。
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「ひな」P6
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「ひな」のモデルとなった猫

現地で撮影した写真資料を元にアトリエで制作しましたが、実際に作品にする際には背景や足元の薪を整理したり前脚の大きさなどを調整したりしています。
また、現地で描いたクロッキーなども参考にしました。

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クロッキー①
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クロッキー②

 

制作手順としては、パネルに綿布を貼った支持体に、テレピンで薄めたグレーの絵具を全体に擦り込みます。
グリザイユやカマイユといった単色で描き始める技法もありますが、私の場合はデッサンをしてフィキサチーフで定着させた後に、固有色で描き進めていきます。
資料として写真を使用してはいますが、モチーフの形態感や空間は常に意識しながら描いています。
そこからは、試行錯誤を繰り返し、納得がいくまで作品と対話しながら、仕上げていきます。

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「ひな」制作途中

 

詳しくは、作品の全制作過程を記録した動画を、定期的にYouTubeチャンネルに投稿しておりますので、そちらも是非ご覧下さい!

https://www.youtube.com/c/HikidaCatArt

■奥へ吸い込まれるような輝く瞳

 

油絵具には大きく分けて透明色と不透明色がありますが、不透明に色を塗るだけでは、輝くような瞳は描けません。
逆に透明色だけで描こうとしても表面的な輝きは生まれますが、奥へ吸い込まれるような深みは中々出ません。
まず始めに、不透明色の油絵具を使ってしっかりと絵具の厚みを作ってから、乾かした後に透明色をグレーズ(※薄く絵具を塗ること)します。
その後、部分的に不透明に細部を描き起こしたり、透明色をグレーズしたりということを何度か繰り返すことによって、多層的で豊かな色彩が生まれ、輝くような瞳になります。

■深島の猫たちをモデルに

疋田正章F100Pride

「Pride」F100

モデルは、兵庫県姫路市にあるメインクーン専門の猫カフェ「mof.mof.」の雅くんです。
雅くんは造形的な美しさと気品があり、今までに何枚も作品にしています。
以前「雅」という作品でも似たようなポーズを描きましたが、誇り高く気品のある表情が気に入っていたので今回大きなサイズで描いてみました。

疋田正章P6雅
以前描いた「雅」 ※今回の個展には出品致しません。

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「ひな」P6

モデルは、深島に棲んでいる猫です。
今回の個展では他にも何点か深島の猫を制作していますが、深島という島は、父の実家であり私の第二の故郷である大分県佐伯市に浮かぶ猫の島です。

まだ広く知られてはいませんが、とても静かで温かみのある素晴らしい島です。

モデルになった猫は、陽の光を浴びて胸元の白い毛並みが輝いている姿が印象的でした。
白い毛並みの部分部分に鮮やかな色を差し込み、影にはブルーをグレーズする事によって、輝くような毛並みを表現しています。

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深島①
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深島の猫たち①

疋田正章3Fルカ
「ルカ」F3
こちらの作品も深島の猫がモデルになっています。
遠くを見つめる凛々しい瞳が印象的な猫でした。
瞳の部分は、絵の具を不透明に置いたり透明に色を重ねたりを交互に繰り返し、また、部分的に鮮やかな緑や黄色を差し込むことによって、透き通るような輝く瞳を表現しています。
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深島の猫たち②

 

 

疋田先生、ありがとうございました!
個展は6月25日(木)~7月4日(日)まで開催しております。
上記でご紹介した作品に加え、全10点の新作を展示致します。
6月26日(土)・27日(日)・7月3日(土)・4日(日)は疋田先生もご来場予定です!

この機会に是非ご高覧くださいませ。

以前のインタビューはこちらから

◇2019年インタビュー
疋田正章インタビュー2019 : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)

「疋田正章 油彩画展 -瞳に宿る物語-」
6月25日(金)~7月4日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:疋田正章
作家来場日:6月26日(土)・27日(日)・7月3日(土)・4日(日)

立命館大学理工学部を卒業後、画家になるという経歴を持つ疋田正章。猫や女性を中心に作品を制作していますが、女性は肌の艶やかさ、手の細部まで丁寧に描き込まれ、猫は毛の柔らかさ、瞳までもが透き通るような美しさを持っています。リアリズムという言葉が近年流行っていますが、そこには捉われず、自身の感性や美意識を、作品に丁寧に注いでいる姿勢が感じられます。今回の個展では猫作品を中心に展示いたします。彼は、猫と出会ってから、真摯に向き合ってきました。時にはその存在に救われた事もあると語ります。そんな作家の想いが猫の美しい瞳に投影され、物語を紡ぎだす今回の個展「瞳に宿る物語」をこの機会に是非ご高覧頂けますと幸いです。

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疋田正章

疋田正章

猫や人物をモチーフにした作品を中心に制作しています。自分が心惹かれるもの、儚く美しいと感じるものを、自分自身のフィルターを通して作品に昇華することによって、誰かの琴線に触れることが出来たならと思います。   疋田正章 HP http://www.masaakihikida.com/