武蔵原裕二インタビュー2021

11月10日よりあべのハルカス近鉄本店にて個展を開催する武蔵原先生にお話しを伺いました!


■動物を描くきっかけ

身近なものでフワフワしたものを触りたくなる衝動は多くの方にあるかと思います。

子供が常にある特定の毛布地のブランケットを肌身放さず持っていないとダメなのを見ていると、私に似たのか、それとも私がまだそれが残っているのか…

今でも寝具の素材など、こだわりが強いと言われてしまいます。

子供の頃実家ではハムスター、文鳥、ひよこ、犬など飼っていました。が、どれも白色ばっかりでしたね()

グレートピレニーズという大型犬も飼っていました。

犬派の私も、ツルッと光沢のある毛の犬種をあまり好まないので、やはり視覚からや肌感触のこだわりが動物にもあると思います。
武蔵原裕二10P向こう
「向こう」P10

 

動物を描くきっかけをよく聞かれることがありますが、特にあったわけではありません。思いおこせば、大学は課題がありテーマが決まっているなか、自由課題や何を描いてもいい卒業制作、終了制作はすべて動物を描いていました。ですので卒業後も自然と動物を描いていました。

動物はペットとしてというよりは、ファンタジーの世界になってしまいますが、仲良くなりたい、共にすごす世界観に憧れがあります。

武蔵原裕二8P白き王
「白き王」P8

 

■描く動物へのこだわり

動物ならなんでもいいというわけではありません、やはり好きな動物、描きたいと思うものを描きます。

白くて大きな動物が好きな私は、よく好んで白い動物を描きます。毛並みの柔らかさはもちろん、単純に白の濃淡だけではなく、黄白色の岩絵の具で毛描きをし、厚みや温かさを与え、そこにより白く透明感のある胡粉を重ねることで白色の幅を広げます。

鳥の白色は、軽さを出すために胡粉のみで描いています。

また、ふわふわ好きのため、毛の触りたくなるような柔らかさにはこだわっています。

実際触ると硬い毛並みの動物もいますが、見て感じた思いを大切にしています。

武蔵原裕二6P春を行く

「春を行く」P6

 

■季節感や動物の雰囲気は背景の“色”だけで伝える

色には温かい、寒いというイメージや、優しい、冷たいなど様々な感じ方があります。そして日本には四季があり、それぞれ連想する色があります。画面上でできるだけ説明を減らすため、背景を描きません。ですので、背景(余白)部分にそんな色による効果も利用して雰囲気づくりをしています。また、動物のイメージや、色に合わせ決めています。

 

■制作過程

 下図
下図
背景の着色
背景の着色
転写
転写

私の多くの作品手順は、下図作り、背景の着色、転写、動物の着彩です。

毛並みのフワフワ感をだすため線でくくりたくないので骨描はしません。

転写の際は彩色した色に馴染む様に、黒い箇所はグレー、それ以外は白色に写る紙(念紙になる紙)を挟み転写します。

毛がき黒
毛がき白
毛描き

毛描きを黒毛は黒、それ以外の色の毛を象牙色(白)で一度します。特に白で毛描き起こす場合下地に色がないと一本一本の線が浮かび上がってきません。また背景を動物を避けながら塗るとどうしても刷毛跡が出てしまうので先に全体に仕事をします。そして先に背景をやると毛描きの発色が落ちるため茶色などの白くない毛のものも一度白色で毛描きをします。

ですが、絵によっては5割り、7割り背景を作り、転写、動物を描いてから、残りの背景をやることもありますし、毛描きをしない動物や、植物画などは転写、骨描き、着彩とやっていきます。

描き込み
着彩
武蔵原裕二6Fこいぬ
完成

完成のイメージをしっかり持ち、逆算してどのルートで進めていけば効果的か考え、それに合わせてプロセスを変えています。

あと日本画は画面を寝かせて描きますが、私は背景は寝かせますが動物自体は基本画面を立てて描きます。毛描きは細い線を引くため筆を画面に直角気味に当てたいためです。それをいろんな方向に沢山引くのに手早く楽にできるからです。

武蔵原裕二116.7x62.2竹虎図

「竹虎図」622×1167(㎜)

■武蔵原裕二 日本画展 ~愛しき動物たち~

関西では初個展となります。関西と言えば虎、私自身もよく好んで描く動物でもあり、また来年度の干支ということで、「竹虎図」をメインに黄色と白、大人と子供の虎の作品を含め、制作しました。

また、これまで全国各地で出会った自身が好きな動物、興味引かれる小動物から大きな猛獣まで、そんな動物たちを愛情込めて描きました。

武蔵原先生、ありがとうございました!
個展は11月10日(水)~11月16日(火)まで開催しております。

「武蔵原裕二 日本画展 -愛しき動物たち-」
11月10日(水)~16日(火)
会場:あべのハルカス近鉄本店 タワー館11階 美術画廊
出品作家:武蔵原裕二
作家来場日:11月13日(土)・14日(日) 各日13:00~17:00

動物たちのリアルな描写と豊かな表情を日本画で巧みに表現する、武蔵原裕二。好きだから自然とモチーフとして選んだという動物たちの、仕草や表情、格好、形や模様に魅力を感じるのはもちろん、フワフワとした毛並みなど、かわいい、かっこいい、おもしろい、そういったところに思わず触りたくなるような衝動を感じさせます。空いた時間に全国各地の動物を泊りがけで取材し、表面的なところだけではなく、生態から理解するなど、動物たちのことを深く知り、躍動感や生命力を表現します。今回の個展では来年の干支が虎ということもあり、「竹虎図」をメインとし、大人と子供の虎作品も出品致します。そしてこれまで全国各地で出会った武蔵原が好きな動物や興味を引かれる小動物から大きな猛獣まで、様々な動物たちへの愛情が込められた作品を是非ご高覧くださいませ。

 

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武蔵原裕二

武蔵原裕二

動物はペット的な可愛さだけではなく、毛並みや大きさや仕草、環境や能力に適した色、模様、体つきはとても面白いものです。動物達に出会い感じた思いや、ヒントをもらい、時には動物自体の美しさを前面に、時には動物が見せる仕草や格好からイメージをふくらませ物語を作ったり、また現実ではありえない「こんなことしていたら面白いな」と思う自身の願望(擬人化など)を描いたりし表現しています。中でも白くて大きな動物が好きで、シロクマやホワイトタイガーなど白変種を好んで描いています。動物を見て触りたいという衝動、そんなごく自然に湧き出る感覚、〝思わず触りたくなる画面〟動物達を通しそんな絵が描ければと思います。