坪田純哉インタビュー2020

明日7月15日(水)より、あべのハルカス近鉄百貨店にて個展を開催される坪田純哉先生にお話をお聞きしました!

坪田純哉2017

制作のコンセプトを教えてください。

空や水は世界共通のテーマと言えるかもしれません。
そんな空や水の織りなす一瞬の現象を取り入れながら、古来から描かれてきたモチーフなどを描いています。
絵具の色の力と金属箔の光の反射の効果を利用して、静と動の同居するような作品を目指しています。
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-作品のどこを一番見て欲しいか教えてください。

自由な感覚や解釈でご覧いただければと思います。
抽象画を描いていた時期もあり、今も具象でも抽象の感覚で描いているところがあります。
箔を使った作品は光の反射によって印象が変わって見えるところが面白いと思いますので、様々な角度からご覧いただきたいです。



-絵は昔から描かれていたのでしょうか?

実は高校に入るまではあまり描いておらず、中学ではパソコン部でした。
その学校が自分の世代では珍しく、いち早くパソコンを取り入れた学校で、プログラムを書いたり絵を描いていましたね。



-作家を志そうと思ったのはいつ頃ですか?

高校時代に入った美術部が普通高校でありながら、美術系に進学する先輩も多かったんです。
そこで自分ももっと学びたいと思うようになったのが、最初に絵を始めたきっかけです。
最初は油絵を描いていたのですが、ある時先生に日本画が向いていると言われ、たくさんの美術展を鑑賞していくなかで、本当に日本画の魅力を感じて進学を決意しました。
大学に入ってから、実際に作家として活躍する先生や先輩たちを見て刺激を受け、自分も未知の可能性に希望を持って様々な表現にチャレンジしました。
大学を出て、実際に自分の力が試される場面では、一枚の作品で勝負しなければならないことが多く、画風を一つに絞ることに焦っていたのでしょう。
次第に行き詰まり、続けることに疑問を感じるようになります。
大学院を出て一年が過ぎた頃、そんな自分に揺さぶりをかけるために、思い切って制作から離れ8ヶ月海外で過ごしました。
語学を学びながら美術館などでたくさんの本物を観て過ごすうちに、日本から離れたことで日本美術や素材の魅力を再認識することができました。
そして帰国後、自身の呪縛からも解かれ、ようやく現在に繋がるテーマで始めることができたように思います。



-帰国されてから作風はどんな風に変わりましたか?

旅を通して、改めて日本画の色彩の魅力を再認識し、モノトーンの具象から一転して「空」をテーマに線と色の変化だけで抽象的な作品を描き始めました。



-初期はモノトーンの具象作品を描かれていたのですね。

当時は光と影をテーマに、色彩を抑えることで物の質感や空気の湿度など、リアリティにこだわっていたように思います。
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「雨空の下」F100号 2000年作(青垣2001年日本画展佳作賞)


-坪田先生と言えば「水紋」を取り入れた作品が印象的ですが、こちらも帰国されてから描かれるようになったのでしょうか?

世界共通で常に変化するものとして「空」を描いていました。
そこから次第に水面に映る空へと視点が変化し、図形的には楕円(波紋)の組み合わせに興味が移り変わってきました。
色彩の持つ力で光の変化を表したり、金属箔との対比で「静」と「動」を表したりするようになりました。
現在ではまたそれをベースに、鯉や花など具体的なモチーフを取り入れながら展開しています。
琳派など主に江戸時代の絵画からも影響を受け、平面的に構成した作品も展開しています。
坪田純哉M6銀河の雫
「銀河の雫」 M6

具象寄りの作品で描く「鯉」や「花」については、もちろんモチーフそのものの美しさを表したいというのもありますが、
同時にまわりの水や空気の存在感を表すために描いている意識が強いです。
坪田純哉F4sky%20flower
skyflowerF4

-それぞれのモチーフは、実際にスケッチなどをして作品にされているのでしょうか。

モチーフによって可能であればスケッチしますが、波紋など一瞬の現象は自分で撮影した写真などを参考に想像も加えて描いています。
しかしそれだけでは足りず、普段から雨の日の水溜りやプールなど水面を凝視して目に焼き付けています。

 

-制作手順(画材を含む)を教えてください。

1
小下図制作(エスキース)
大下図制作(原寸大下図)
麻紙や絹に転写・骨描き(転写した線を墨でなぞる)
下地作り(部分的に盛り上げたりしてベースを作る)
3
箔を貼る・マチエールを作る
岩絵具などで彩色、描き込み
金泥、雲母などで変化をつける(を繰り返す)

-絹と和紙、両方の素材は作品によって変えられているのでしょうか?

薄塗りでグラデーションをきれいに出したい場合や、裏彩色の効果で奥行きが欲しい場合に、絹を選びます。
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-技法の中でどこに一番こだわりを持っているか教えてください。

最近は箔を使った様々なマチエール作り(絵肌の効果)にこだわっています。
下地に様々な凹凸を作って箔を貼り、そこから洗い出したり、砂子を蒔いたり、技法を複雑に組み合わせています。
偶然的な表情が出て面白いです。
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-影響を受けた作家・作品を教えてください。

最初、高校で油絵を描いていた頃はミレー(バルビゾン派)や印象派が好きでした。
日本画を目指すきっかけとなった一人は東山魁夷で、ドイツの大寺院の塔を描いた「晩鐘」を観て日本画でもこんな明暗の表現ができるんだと衝撃を受け、自分の中の日本画のイメージが変わったのを覚えています。
竹内栖鳳、速水御舟などの作品も好んでよく観てました。
日本の絵画について学ぶほどに興味は狩野派、琳派、長谷川等伯、伊藤若冲など桃山〜江戸絵画へと広がっていきました。
一方で現代作家も尊敬する方はたくさんいます。


-田先生は、先日「市川うららFM」の「boys be ambitious」にラジオ出演されていましたよね。
作家さんがメディアに出られる事は貴重だと思うのですが出演されてみていかがでしたか?

ラジオは初めてのことで、緊張して頭の中が真っ白になってしまいました(笑)
限られた時間の中で言葉だけで説明する難しさを感じましたが、とても良い経験になりました。
「日本画」と言っても、全く知らない人に向けて分かりやすく伝えるために、絵具の特徴など材料論だけで語ってしまいがちですが、
本来なら日本の絵画の歴史的な流れについてもお話したいところですし、一言だけでは伝えきれないものがありましたね。
堅苦しい説明よりも、自分自身のエピソードをお話したほうが面白いかなと思いそちらをメインでお話させて頂きました。
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行政書士の柴田先生、パーソナリティの松野さんと。



-作家として最も大事にしている心構えを教えてください。

常に作品のクオリティを上げていこうという意識をもつことです。
向上していくためにも、一枚一枚の作品の中に自分の想像を超えるような発見や気づきを求めています。



-今後の夢や目標を教えてください。

とにかく描き続けて、自分なりの新しい表現をさらに追究していきたいです。



-最後に、作品を観に来て下さる皆様に一言お願いいたします。

今回は夏の開催というのもあり、水をテーマにした作品が多いです。
ぜひ涼みにいらしてください。

 

坪田先生、ありがとうございました!個展は明日715()より開催いたします。
あべのハルカスでは2年ぶりの個展となっております。

是非ご高覧下さいませ!

「坪田純哉 -ひかりの雫-」
7月15日(水)~7月21日(火)
会場:
あべのハルカス近鉄本店 タワー館11階 アートギャラリー
出品作家:坪田純哉
作家来場日:7月18日(土)・19日(日) 各日13時~17時

具象と抽象を含む新感覚の作品世界を描く日本画家・坪田純哉。

大学院修了後に絵から離れ、半年以上ヨーロッパで過ごしたという経験から、日本画ながらも色彩の持つ力で光の変化を巧みに表現します。

また、坪田は琳派など主に江戸時代の絵画にも敬意をはらいながら制作しております。

墨や金属箔との対比で「静」と「動」が同居する作品は、どこか幻想的な世界観です。

あべのハルカスでは2回目のご紹介となります。是非ご高覧くださいませ。