河本いづみインタビュー2021

10月15日よりGallery Seekにて個展を開催する河本先生にお話しを伺いました!
今回の個展テーマ
しっかりとした色彩をターゲットに制作しました。特に高彩度の果物や花の色は命そのものと感じるほどで、気分も高揚し感謝の気持ちまで生まれます。
今回の展覧会では色彩への感謝を込め『色彩を謳う』という副題にしました。


■色を何層にも重ねていくことで増す、モチーフたちの鮮やかさ
1層目はモチーフに近い色があればそれを固有色とし、それに白や黒、アースカラー等パレット上でブラシミックスして画面にのせたり、
直に画面上にチューブからの色を置いて探っていくようなスタイルで描いています。いったん描いた後乾かしますが、
彩度は落ちることが多いので2層目以降透明色でグレーズしてから再度描きおこします。

河本いづみS8彩
「彩」S8
河本いづみS8彩
「彩」S8 拡大

「彩」のデキャンタに関しては、たまたまデキャンタに近い色があり固有色として使いました。
2層目以降のグレーズ色は着色性が弱い青を使い、グレーズと描きおこしを何回か繰り返しました。
各メーカーで色味が違うので、使えるかどうかわからずに買ってみることも多いです。
絵具箱には結構本数入っている方だと思いますが、今回はあまり出番のない色が活躍しました。


■モチーフが引き立つように背景にもこだわる

もともとドラマティックに感じられる表現が好きで暗い背景をよく使います。
低明度背景の中にあるモチーフ群ということで明暗のコントラストは大きく、遠近感やモチーフそのものの立体感が描きやすい。
強い彩度のモチーフも高明度の背景上よりきつく見えなかったりします。
使っている黒は、三嶋哲也先生からご紹介いただいた春蔵さんのVenus油絵具『Grape Black』一択です。
温かめで重苦しくない黒なので好んで使っています。
注意していることは、ただ一色を塗るだけにはしないこと。
軽い調子であってもグレーの諧調を感じるようにグラデーションをつけたり、
必要と感じればモチーフに対して効果的と感じられる色を薄くグレーズしたり等、無味乾燥な感じを避けるようにしています。


河本いづみF4宵に輝く

「宵に輝く」 F4 拡大

「宵に輝く」では、黒背景だと高彩度の芍薬の色が浮き過ぎるデメリットがあること、
宵闇であることが前提にあったことから、グレーがかった低明度の青を使いました。


■写真では捉えられない“生”の空気感を大切に

果物や花、アンティーク物を組み合わせた大きめの静物画では、実際に画面上に存在するかのような空気感を大切にしているので、
基本的にはセットアップした実物を見ながら制作しています。
まずは生ものから描き始め、フレッシュさを保てないと見越したらそこで撮影、画像を参考に描いていきます。
最初から画像そのもののみで描くのは、遠近感や立体感を掴みづらいので自分には難しいです。
常に一枚の絵から醸し出される情景情感をうまく描き込むことをゴールにしています。
一方、例えばバラを一輪だけ描くという場合は、始めから画像頼りに描きます。
まずはフォームや色をしっかりと決め、決まってからはその一輪のバラを通して伝えたい自分の感情を込めていきます。


■モチーフが纏う空気感

河本いづみM50月華

「月華」 M50
白いクレマチスの下、穏やかなひと時を過ごす...といったシーンを描いています。
時間は夜、月の光が漂うような雰囲気を背景の青いグラデーションに込めました。
50号と大きい画面なのでモチーフもバラエティーに富ませています。
どっしりとした花瓶に活けられた薄い花びらのクレマチスといった質感の対比、赤紫の布と黄色い林檎といった色の対比、
銀のポットとティーカップ、水やチョコレートの入ったグラス、中央にはウィスキーの入ったショットグラスに読み疲れた本等。
バラエティーに富ませながらも、一貫として夜のゆったりとした穏やかな時間が感じられるよう腐心しました。

 河本いづみM20語らい

「語らい」M20
長年連れ添った年配のカップルのゆったりと語らう時間を表現した作品。
愛情を表すものとして紅い薔薇を使いました。
色の流れでワインは赤、布も紫がかった赤を使い、色調和が取れるようにしています。


河本いづみにしか出せない魅力

デコラティブペインティング界で学んだ知識の基盤が作品作りに直結していると思います。
色を美しく表現すること、そして多色を使ったとしてもお互いに響き合う色調和があること。
これは私にとって絶対で、常に意識しどの絵にもそれが表れているように思います。
また、光を感じさせるような柔らかいグラデーションがある背景や『Lost and Find』といったしっかりと見せる線と消えゆく線を上手く扱うこと。
特に大きな作品ではモチーフも多くなるので物語が感じられる構成を腐心するのですが、色調和の他にLost and Findがうまく表れることで雰囲気のある画面になる。
それが私の絵のオリジナリティーに繋がると思っています。




河本先生、ありがとうございました!
個展は10月15日(金)~10月24日(日)まで開催しております。

以前のインタビューはこちらから

◇2017年インタビュー
河本いづみ作家インタビュー : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)
◇2020年インタビュー
河本いづみインタビュー2020 : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)

「河本いづみ 油彩画展 -色彩を謳う-」
10月15日(金)~10月24日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:河本いづみ
作家来場日:10月15日(金)・16日(土) 各日13:00~17:00


アメリカでデコラティブペインティングを学んだ後、油彩画家・三嶋哲也に師事し、みずみずしい果物や、 鮮やかな花などの静物画をメインとした作品を描いている写実画家・河本いづみ。 1枚の絵の中に入れ込むものは、調和とバランスの取れた生き生きと煌めく力のある色彩美。 モチーフ一つ一つのどっしりとした存在感。そして画面には、注ぎ込むような光やベールのようにまとう柔らかい光を描き入れ、雰囲気のある色世界を目指しています。 今回の個展は『色彩を謳う』をテーマに、色彩への感謝を表現した作品をご紹介致します。 高彩度の果物や花の色は命そのものと感じるほどで、気分も高揚し、感謝の気持ちまで生まれます。 ずっと見ていたくなるような、引き込まれるような新作の数々を是非ご高覧くださいませ。