明日15日(木)より1年ぶりの個展が始まります新家未来(ニイノミミク)先生にお話を伺いました!
–今回の個展のテーマを教えてください。
今回、個展のタイトルを“染められるたびに”としました。
さまざまな作品を見るとき、視界が染められた感覚になります。
その世界に連れ込まれるような、迫りくるような。
今回の展示している空間すべてで、来てくださった方のなかを染めていってくれる作品になればいいなと思いつけました。
–様々な作品を見る時とは、美術館などで作品を鑑賞する時でしょうか。
美術館もそうですし、他の作家さんの作品を見る時などもそうですね。
染められた感覚になる時と、そうじゃない時・・・自分の中にある境界みたいなものも今後意識していきたいなと思っています。
–自身の作品を描いている時もそういった感覚になりますか?
最初はそうじゃなくても描き終わる頃にはそんな感覚になることがあります。
最初思っていたイメージと違った表情になっていたり・・・そこも女性を描くときの面白さですね。
–約1年ぶりの個展となりますが、制作されてきた中で心境の変化はありましたか。
結婚や引越しで私生活でも変化の多い一年でした。
これまでは、自分自身や人そのものなど、個について考えることが多かったです。
個として生まれ繁栄し、また個になっていく循環の姿に憧れがありました。
そして、個と個を見ていけば、作者と絵、絵と鑑賞者、作者と鑑賞者とつながることができるのではないかと思っていました。
しかし、そんな思いは、どこか一方通行な感覚もありました。
–以前は絵を描く行為は、不安を埋めるためでもあり、不安を作り出すものでもあるとお話されていましたね。
はい。
「人とつながりたい」と思っていながらも、「でもなかなか難しいよね」と、どこか勝手に諦めてしまうような。
そんな気持ちもあり、絵のなかの女性像にすがるような気持ちで描いて、描いては「まだまだ全然だね」って言われるような感覚でした。
でもそれは、自分の中で繁栄していくつながっていくイメージが実感としてなかったからだと思います。
そんな中、最近は環境も変わり、多くの人との出会いもあり、実生活でも少しずつつながりが増えてきて、制作においても実感をもって表現ができるようになってきたかと思います。
–新家先生にとって心境や環境が変化していくことは制作においてプラスになっているということでしょうか。
日々変化していきたいなと思っています。
最近は、絵画教室で絵を教えることをしていますが、生徒さんが年配の方が多いのです。
人生の先輩方と接する機会ができたことによって様々な考えを知ったり、絵を通してその方の人となりを見ることができ楽しいです。
–作品の変化はありましたか。
より表情が柔らかい作品が増えたかと思います。
以前は女性として芯の強さを感じるような表情が多かったかと思うのですがまた変わってきています。
–髪の表情や、背景の雰囲気も変化があったように感じます。
髪は以前は一本一本丁寧に描く事にこだわりがあったのですが、最近は墨で筆の流れを楽しむようになりました。
また、以前から使っていた技法でもあるのですが、
最初に麻紙に下地になる色を置き→その上に典具帖紙という薄い和紙を重ねてさらに描き込んでいます。
典具帖紙を貼ることで、絵に奥行きや柔らかさが出ますし、絹本の裏彩色のように下地と書き込みを別で表現できたり、レイヤー状に表現できるんです。
特に皮膚の表現としてじんわり滲むような皮膚にしたいので今は典具帖紙を使ってます。
日本画の絵の具だと粒子や、定着のために使う膠が、定着後も水をかけると色が動いて、独特な色の重なりやボケ感になります。
「きみの彩り」F10
–今回の出品作の中で一番見てほしい作品を教えてください。
一番大きな50号の作品です。
なかなか思い通りのかたちにならず、ぎりぎりまで描かせていただきました。
人と人との関係が枝のように伸びていき宇宙のように広がってくれたらという想いを込めています。
「長く眠っていた音」P50
–作品のインスピレーションはどこから生まれてきますか。
最近は、モデルさんがとったポーズの姿を見て、そこからどんどんイメージが膨らんでいく感じです。
さらに切り取ったりデフォルメしたり・・・。
しかし、だいたいのイメージはあるのに、描いているうちに今回はこんな表情になったんだ、と自分で驚くこともあります。
–特定のモデルさんはいらっしゃらないのでしょうか。
ポーズは身近な友人に頼んだり、自分でとって見たりしています。
ですが顔は自分の場合はイメージを重要視しているので昔からモデルさんは使っていません。
–女性像は昔から描かれていたのでしょうか。
大学4年ぐらいから描き始めました。
人物を描くことが元々好きだったということがあるのですが、自身のコンプレックスも繋がっています。
昔から自分は「女性として機能しているのだろうか?」と感じることが多くありました。
友達はいるけど恋人ができなかったり、好きな人がなかなかできなかったりと自分が歳を重ねれば当然できると思っていたものが全くできなくて。
コンセプトにもしている、人として繁栄していくことができない怖さみたいなものがあったのかもしれません。
女性像を描く事によって自身を投影し、様々な方に見てもらうことによって認められている感覚です。
展示をする時は自分の描く女性たちに「後は任せた」と気持ちを託しています(笑)
–今後新たに挑戦したいことはありますか。
大学院を卒業後、日本画という以前に、人物画として強い作品になるよう努めてきましたが、最近また日本画材と改めて向き合いたいと思うようになりました。
歴代の先輩方のおかげでさまざまな発展をしてきた日本画というジャンルで、画材特有の面白さをまた楽しみたいと思っています。
–画材特有の面白さというと、例えばどのようなことをしてみたいですか?
まだ色々試行錯誤している段階なのですが、金箔など日本画ならではの素材を使っていきたいです。
–最後に個展を見て下さる皆さまに一言お願いします。
人物ばかりに囲まれた空間で過去やいま、未来へと思いを馳せていただけると幸いです。
新家先生、ありがとうございました!
個展は15日(金)より開催いたします。是非ご高覧下さいませ。
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