山﨑有美インタビュー2020

現在、Gallery Seekにて約1年ぶりの個展を開催されている山﨑有美先生。

お話をお聞きしました!

-約1年ぶりの個展ですが、心境の変化、作品の変化はございましたか?

世の中が急激に変化したことによって、作家としての出来ることは何なのか?何を伝えたいのか再考する良い機会となりました。

展覧会の中止も何度か経験しました。

作品を発表できる事の大切さ、激流の中にいても揺るぎないものは何なのか?また流れてみる柔軟さも学べたと感じています。

そんな中、作品も単に表面的にきれいなだけの絵では無く、何か問いを投げかけたり、鑑賞者に考える機会を与えられるような、人としての希望や生きている生身の感覚を喚起させるものを描きたいと思うようになりました。

 

-今回の個展のテーマを教えてください。

日常が一変する経験をし、人としても絵描きとしても世の中の見え方が急に色を変えた様に感じています。
この経験を生かし、普段見えている世界の色とは異なる空間を作りたいと思い立ちました。

生命力の象徴として赤色の作品で会場を満たしてみたいと願いました。
そこから今回の個展のサブタイトルを「scarlet」としています。

モチーフとして描いている水や火には相反する様に思えますが、「浄化」や「再生」という共通のイメージがある様に感じます。
花の色、肌の色、性別…固定概念を全て取り払って今一度考えたい。
あらゆるモノが表裏一体であり、また二律背反とも言えるはず。

「はなのいろ」S3

大切なのは染まらないモノをひとつだけ
それぞれの心に持ち続ける事なのかもしれないと。

私の作品を通して心地よい違和感や記憶のよすが、またアンビバレントな感情を抱いていただければ幸いです。

 

-作品のどんな所を一番見て欲しいですか?

まずは全体の空間として感じ、それから部分や細部を観て、どこに違和感や面白さを感じるか考えてほしいです。

前回に続き、今回も二重技法で描いているので、あらゆる角度から見てその変化や色彩の奥行きを感じていただけたら嬉しいです。

 

-山﨑先生にとって、「紙本」「絹本」「二重構造」と作品によって技法を変える基準となるものは何でしょうか?

二重構造を使うことで両義性やアンビバレントを表現しているので、テーマと意味あいが大きいです。私にとってはマチエールなどの表面的な問題ではなく、テーマを表現するための技法なのだと思います。

なので、まだまだ変化していきたいです。

今回は下に鏡、上に絹を使った作品も出品します。

画像がちょっと分かりづらいですが、鏡に映った虚像も含めて一つの絵画になる様に描いています。


烏瓜(カラスウリ)の花は、夜にしか咲きません。

ひっそりと美しい様子に惹かれ昔から描いているモチーフです。

闇の中に永遠に、脈々と続いていくイメージを表現するためにこの技法にこだわりました。

 

-今回の大作、「浄花」はS50号という大作ですが、どんなイメージで描かれたのでしょうか。
桜の花筏の中に女性像を組み合わせて描きました。

スケール感を出したかったので、この技法では過去最大サイズの50号にしました。
本来、桜のイメージだけで言うと、赤ではなく白やピンクなのですが、赤い色に染め上げる事によって固定概念を一度外しました。

そのあり得ない世界感について、鑑賞者が一つ考えるきっかけとなってくれるのでは無いかという想いで描きました。

世界的にもジェンダーの問題やテーマを扱った映画、ドラマも増えていてる世の中で、私自身もそう言ったテーマも含めて表現して行こうという決意の作品でもあります。
赤は生命としてのエネルギーの強さ、女性の内面の強さ、華やかさ、またタイトルにつけた「浄花」は沢山の花びらが浮かぶ水の中に解き放たれる事によって「浄化」されるという意味合いを込めました。
不安な世の中を経験したからこそ、生まれた作品だと感じているので思い入れも強いです。

「浄花」S50

-元々、ジェンダーの問題やテーマに興味を持つようになったのは何故でしょうか?

昔から強い女性への憧れがありました。

そう言ったテーマの映画や本、小説なども沢山みて来ました。
昔の名作で言えば風と共に去りぬ、最近はドラマ化もされている侍女の物語など。

近年は女性として、作家として生きていく上で自分が経験し、感じた生きづらさや、選択と決断の苦悩を身をもって感じたことは特にジェンダーの問題に興味を持つきっかけとなりました。
またMeToo運動など世界中で巻き起こったムーヴメントによって、綺麗なだけでは無い、強さを内包した女性像を描く事によって絵描きとして何か表現し伝える事が出来ないかと考えるようになりました。

 

-前回のインタビューで「和と洋の融合」を目指しているとのことでしたが、今でもお変わりありませんか。

基本的には変わっていませんが、日本画や技法にとらわれず、もう少し広い感覚で柔軟に平面絵画の可能性、深さを自分なりに追求したいと考えています。

コロナ渦には普段とはまた違った技法でアマビエ様の作品を制作しました。


アマビエ様は光輝く姿で現れたと聞いて、キャンドルの優しい光のイメージにぴったりだったので作品にしました。

昼間の光でも夜の闇でもアマビエ様が見守ってくれたらと願い女神として描きました。

 

-制作以外では普段どんな事をして過ごしていますか?
制作以外は美術鑑賞が趣味でもあるので、かなりのペースで現存作家さんの展覧会巡りや美術館に足を運びます。

関東や関西まで観たい展覧会があればなるべく行きます。

内容は絵画だけでなく、現代アートから工芸、彫刻まで幅広く興味があります。
インプットとアウトプットのバランスは気をつけますが、アートライブラリーで半日くらい滞在して没頭する事もあるくらい美術ファンな一面があります。

またそれ以外では、子供から大人まで幅広い年齢の生徒さんをカルチャーや絵画教室で教える事も仕事であり、学びとして生活しています。

共通言語とも言える絵を通して、全く異なる環境や仕事、年齢の人と繋がる面白さや客観性、多様性は、自己満足にならないための学びでもあるかもしれません。

また、教室後に展覧会巡りをするという流れの日も良くあります。
人間好きなのですが、普段は制作で引きこもりがちなので、教室で人とのコミュニケーションの中に学び、更に展覧会は一人でじっくり考察しながら鑑賞を楽しみます。
そんな一日は幸せです。

 

-新たに目指している夢や目標はございますか。

2020年のアートフェア東京の中止で出品が延期になってしまったので、やはり国内や海外のアートフェアを今後も目指したいです。

そのためにも世界共通のテーマ、モチーフを使った大作を発表してみたいです。
展示空間自体を

また、書籍やパッケージなどに作品を起用していただくことも夢の一つです。

-最後に、作品を観に来て下さる皆様に一言お願いいたします。

このような時期だからこそ見つかったテーマの作品、空間となっているはずです。

どのような感情であれ、何か一つでも感じ取り、考える機会となりましたら幸いです。

どうぞ宜しくお願いいたします。

 

山﨑先生、ありがとうございました!

個展は11月6日(金)〜11月15日(日)まで開催しております。
14日㈯、15日(日)は作家さんも来場されます♪

新作10余点を是非ご高覧くださいませ。

 

以前のインタビューはこちら↓

http://blog.livedoor.jp/soratobu_penguin/archives/9368305.html

「山崎有美 個展 -scarlet-」
11月6日(金)~11月15日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:山崎有美
作家来場日:11月6日(金)・7日(土)・8日(日)・14日(土)・15(日)

以前より二面性、両義性のあるモノに惹かれ制作を続けてきた山崎有美。光と闇、生と死、アンビバレンツ。それらを表現した、絹と和紙の二重構造の描き方は日本画の新しい境地を感じさせます。近年描かれている女性像は、女性の表面的な美しさだけでなく、内に秘めた強さやゆらゆらと漂う精神性が垣間見えます。GallerySeek1年ぶりの個展では「-scarlet-」と題し、赤をテーマカラーにした新作10余点を是非お楽しみくださいませ。