北島優子インタビュー

4月28日からGallery Seekにて北島優子先生の個展を開催致します。

北島優子の作品で一番のこだわりを感じるのは“はえぎわ”。美人画の“美”、その根源がどこに宿るのかを問いかける様な強烈なフェチズムと、それを際立たせる上品な表現。「フェチを上品に」というテーマを掲げ、顔を描かなくても成立しうる唯一無二の美人画の可能性を探ります。
今回のサブタイトルは“Obsession”。『執着・執念・妄想・病みつき・凝り性・偏愛』のような意味があり、以前よりこだわりを持って描いている生え際の他に、『ヒラヒラしている薄いもの、透けるもの』『繰り返す繊細なもの』を北島氏ならではのObsessionとして作品に取り込んでいます。


北島優子M10緋のドレス
「緋のドレス」 M10

■フェチ×上品

画題は女性像の場合が多いのですが、はえぎわの描写はできる限り執拗にと思っています。
幼い時の妹の髪を編むときの心地よい緊張感、白い頭皮と細い黒髪のコントラストなどを心から美しいと思ったことが最も原始的で強烈な描く動機となっています。
それから掴めそうで掴めない霧や煙のような一筋縄ではいかない女性の詩情を描こうとするとき、人物の纏う衣装・装飾の表情や素材感に想いを重ねて描くことが多いです。
衣類装飾は肌を覆いますがときに内面をあぶり出します。
偏愛するものを執念深く描き切りたいと思いつつも、根底にどこか品を漂わすような人物像を描くことは永遠のテーマであり、自分を解放し許すことでもあると思っています。

北島優子P8風に吹かれて
「風に吹かれて」 P8

■表情・服装・髪型などのインスピレーション

母の服飾の仕事柄、自宅の作業場には輸入生地やファッション誌が山積していて、幼少期からたくさん眺めていました。思春期にマドンナのEroticaを知ってしまい、当時のブロンド・アンビション・ツアーでのゴルチエの衣装や本格ボンデージファッションを着こなす姿に『ファッションや音楽を利用して自身が時代を作っているという自信に満ちた表現』を見せつけられたような衝撃を受けたのが私にとっての一生引きずる驚きの黒船体験であり、描きたい女性像の原点だったように思います。その後90年代のスーパーモデルブームにもドハマりして、いまだにその頃の好みが抜けません。
30代はファッションに関わるイラストや、ライティングのお仕事をさせていただく時期があって、その中でもシャネルのオートクチュールのプレゼンテーションを数シーズンにわたって取材する機会に恵まれたのですが、そこで最高峰のドレスの素材と刺繍などの技巧、メゾンの職人技術の保護精神を目の当たりにしたり…。その数年間は普通に生活していたらなかなか目にすることのない美しいものをたくさん観察できたので、自分の描く女性の装いに関してはその辺りのインプットが滲み出るといいなと思っています。

北島優子P30Dress Obsession(明るめ)
「Dress Obsession」 P30


■今回の個展テーマ「Obsession」

“Obsession”は、『執着・執念・妄想・病みつき・凝り性・偏愛』のような意味があります。
まだまだ自分の“Obsession”も完全に把握しきれていないのですが、絵を描くことで今後もっと深堀りできたらと思っています。今回は生え際の他に『ヒラヒラしている薄いもの、透けるもの』『繰り返す繊細なもの』を描いてみました。

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「Dress Obsession」 P30 一部拡大


■フェチのルーツ

生え際は、白い肌や頭皮と黒髪のコントラストが好きで、細かいものが整列し繰り返している“繰り返す繊細なもの”にフェチズムをおぼえるんだと思います。
例えば今回展示しているパールや赤いドレスのように“繰り返す繊細なもの”が描いてて苦しくも楽しいというか…。支持体も頭皮の毛穴を表現するにはキャンバスが最高だったのですが、毛穴表現以外は私には不向きで泣く泣く断念したり現在進行形の紆余曲折中です。

北島優子P6リボンと金属
「リボンと金属」 P6

■想像で磨かれる女性の詩情

掴めそうで掴めない霧や煙のような一筋縄ではいかない女性の詩情を描こうと思っています。実際面倒で手のかかるやっかいなものなのですが、絵になるんですよね。個人的に魅力に感じるところは、迫力というか玄人っぽさがある人です。
後ろ姿の女性もよく描きますが、美人画の肝ともいえる顔を描かないのも、妙な魅力が出る気がします。『色気を放つ、受け取る』って、受ける側の想像力や蓄積してきた経験によってもだいぶ違うと思うんです。なので後ろ姿に何かを感じて魅力を見出してくれる方の想像力があって完成するような気もして、モチーフとしての後ろ姿を大事にしていきたいと思っています。

北島先生、ありがとうございました。
個展は4月28日(木)~5月8日(日)まで開催しております。
4月29日(金)・30日(土) 各日11:00~16:00は北島先生がご来場予定です。
この機会に是非ご高覧くださいませ。

「北島優子 日本画展 -obsession-」
4月28日(木)~5月8日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家: 北島優子
作家来場日:4月29日(金)・30日(土) 各日11:00~16:00

関連アーティスト

北島優子

北島優子

画材は、墨、胡粉、土絵具、岩絵具、アクリル、パステル等で制作しています。画題は女性像の場合が多いのですが、はえぎわの描写はできる限り執拗にと思っています。幼い時の妹の髪を編むときの心地よい緊張感、白い頭皮と細い黒髪のコントラストなどを心から美しいと思ったことが最も原始的で強烈な描く動機となっています。それから掴めそうで掴めない霧や煙のような一筋縄ではいかない女性の詩情を描こうとするとき人物の纏う衣装・装飾の表情や素材感に想いを重ねて描くことが多いです。衣類装飾は肌を覆いますがときに内面をあぶり出します。偏愛するものを執念深く描き切りたいと思いつつも、根底にどこか品を漂わすような人物像を描くことは永遠のテーマであり自分を解放し許すことでもあると思っています。 2021年 北島優子