上中剛司インタビュー2021

6月11日より個展を開催する上中剛司先生にお話しを伺いました!

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■陶の山里から吹く新しい風

丹波焼は日本六古窯にも数えられ魅力的な名品を生み出してきた窯業産地ではあるが、残念ながら近・現代においては目立たない存在でありました。

しかしながら、ここ数年若手世代を中心に枠や形に捉われない独自の作風で活躍する作家が多く現れ窯業地として特に盛り上がりをみせています。

「丹波の七化け」と呼ばれる大らかさの魅力と陶の山里で今まさに吹いている新しい風を感じて頂きたくこのタイトルにしました。

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■古丹波を彷彿とさせる焼き締め作品

今回の作品では、私の作品シリーズの中でも定番になった彩色シリーズに加え、丹波らしい焼き締めの作品にも数年ぶりに挑戦するべく、この5月に登り窯の焼成に挑戦しました。

塗土を施し、赤く発色する「赤土部」、白化粧を施した「白丹波」など伝統的な形と焼きにこだわり制作した作品群は古丹波を彷彿とさせます。艶やかな窯変と力強いフォルムを是非、ご覧になって頂ければ幸いです。

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■窯出しの瞬間に魅せられて

穴窯や登り窯に使用している土は丹波特有の赤土とは違い、近隣の山で独自に採取した土を使用しています。スコップと土嚢袋を担いで山の斜面を登り、土を掘り起こして持ち帰る作業は大変な重労働ですが、自身の作品の源になる部分なので最も大事にしている工程でもあります。

楽しい工程は何といっても窯出しの瞬間です。

特に薪窯は自然釉の流れや窯変、時には窯の中で歪んでしまったり、灰が落ちてそれが面白かったりという、偶然の美、計り知れない魅力に思いを馳せながら日々制作を続けています。

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■上中剛司にしかできない表現

近年制作を続けている彩色シリーズのカラフルな色使いも勿論、特徴のひとつですが、稲右衛門窯の特色の一つが、平安後期から続く丹波焼の歴史で最も古く手間がかかる穴窯焼成による作品です。

穴窯で還元焼成(酸素が足りない状態で燃焼が進行する焼き方)すれば、降りかかった薪の灰が自然の釉薬となり、独特の緑がかった風合いを作品に残します。利便性が優先される現代においても技術が存続しているのは、その方法でしか生み出せない美しさがあるからであると考えています。

また、丹波の土は鉄分を多く含んだ赤土が特徴ですが、穴窯焼成などで使用する粘土は近隣で独自に採取した白土を使用しています。作品の下地(キャンバス)が白いと自然釉の流れやビードロの発色がより色鮮やかになります。

理想とする発色の為に、素材にも独自のこだわりを持って制作しています。

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■「丹波篠山オンラインツアー」に参加するなど積極的に活動を広げる上中剛司。今後の展望は―

コロナ渦で多くの観光産業が打撃を受けており、それは丹波焼をはじめとする多くの窯業産地も例外ではありません。

特に昨年は催事や個展、陶器まつりなどのイベントも全て中止になり実店舗での対面販売も難しい状況が続いています。

ただ、人々のアクティビティの需要が無くなってしまったわけではなく、コロナ渦という状況で一時的に抑制されているだけだとすると、産地として出来ることはアフターコロナに向けてのPRやイメージ戦略が最も大事だと考えます。

前述のズームアプリを使用したオンラインツアーは市役所や観光協会と共同で企画運営したものです。

今後、工芸の産地でもDX化の波は進み、オンラインでの情報発信の重要性は増していくことを考えると、作家個人だけではなく、地域や産地全体としてより一層、ECサイトやオンラインツアー、WEB個展にSNSでの情報発信などに注力することが大事だと思います。今このご時世だからこそ、場所を越えて、作り手の想いに触れることのできる活動を続けていきたいです。

「丹波篠山オンラインツアー」※こちらのツアーは終了いたしました。


上中先生ありがとうございました!
個展は6月11日(金)~20日(日)まで開催しております。
この機会に是非ご高覧くださいませ。

以前のインタビューはこちらから

◇2017年インタビュー
上中剛司作家インタビュー : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)

「上中剛司 個展 -陶の山里から吹く新しい風-」
6月11日(金)~6月20日(日)
※6月11日は13:00よりOPENいたします。
会場:Gallery Seek
出品作家:上中剛司
作家来場日:6月11日(金)~13日(日) 各日13:00~17:00

江戸時代中期から、280年来にわたり継承されている「丹波焼 稲右衛門」の11代目に襲名された上中剛司氏。釉薬の種類や装飾の技法によって変化が多い「丹波焼」の魅力を引き出すため、色合い、色調、フォルムにもこだわった作品は丹波焼の奥深さを感じさせます。今回は定番となった彩色シリーズの他に登り窯で焼成した焼き締めの作品も多数出品します。丹波の土を使い、丹波の伝統を大切にしながら、人と異なるものを作っていく。伝統と向かい合い、850年続く産地の歴史と対峙した新作の数々を是非ご高覧くださいませ。

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上中剛司

上中剛司

暮らしの道具に大切なのは使いやすさと美しさ。丹波焼が誇る「用と美」の伝統を受け継ぎ、現代の生活と共存する新たな丹波焼を表現します。