幼少期、牡丹、藤棚、椿や梅に桜、水仙、柿や栗や柘榴、西瓜や南瓜とたくさんの植物のある環境で育ちました。それらに集まってくる小さい生き物とも慣れ親しんで、自然と絵を描くようになりました。植物にはひたむきに無心に、ただ今を懸命に生きる姿に強さを感じると共に誠実な美しさを感じます。植物や昆虫のフォルムや色彩は計算された美しさがあり、それらは音楽のように様々なハーモニーを奏でます。単に山川草木を描き写すのではなく、自然観と精神性が融合され、いつの間にかに汎用に見えるようになった世界を瑞々しく捉えなおす、私はそんな画を描きたいのです。
今回は、今までの植物のテーマの新展開として、箔を全面に用いた作品を描きました。箔はそれ単体でとても強く、背景に使用するには勇気がいりました。箔の上に描くには、絵の具が定着しにくい、単調になりやすいなど至難の連続です。しかし、先人の大家が多くの金屏風を制作していたこともあり、それらをリスペクトしながら、現代ならではの感覚で金地彩色の大作に挑戦しました。箔との融合でどのような作品が生まれるのか、これからも続く箔作品の第一歩としてご高覧いただけると幸いです。