藤井誠作家インタビュー

明日より東武百貨店船橋店にて個展を開催される藤井誠(フジイマコト)先生のアトリエに訪問させていただきました!
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普段こちらで制作されてるとのこと。
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アトリエに入ると、画材や筆がたくさん。
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飾られていたのは馬場洋さんの作品。

馬場さんの作品は昔から好きで買わせていただきました。

誰よりも真摯に絵に向き合っていて、技術が段違いに高い所に憧れています。

-藤井先生は東京学芸大学の連合学校教育学研究科を卒業されてるんですね。
元々は教師を目指されていたのですか?

高校生の頃は作家として生きるというビジョンのようなものが浮かんできませんでした。
絵と関わって生きていくという目的のため美術教師を目指していました。

 
-現在は中学校で非常勤講師もされていますよね。
そうですね。まだ初めて3か月ですが学校で生徒の前に立つ時と、アトリエで絵に向かう時とでは感覚が大きく違うように感じています。

-そうなんですね。藤井先生の作品は油絵ですが日本画のような印象も受けます。どこか涼しげで軽やかな雰囲気というか・・・
影響を受けた作家さんや作品も日本画の方が多いのですか?
コンセプトとして「日本の写実」をテーマに制作しているのでそんな印象を持たれるのかもしれません。
日本人の持つ美意識を、油彩という西洋の技法で写実的に描くことで、日本画とも洋画ともつかない、新しくもどこか懐かしい、日本独自の油絵ができるのではないかと思っています。
かつて印象派の画家たちが日本の浮世絵にインスパイアされ、新しい表現を開拓していったように、再度現代において日本と西洋の融合を模索しています。

自分自身も物故作家ですが高校生の時に小磯良平の作品に衝撃を受けました。
少ない手数で的確に対象を表現する作品には今なお憧れています。

現代の作家では神戸智之さん、坂本トクロウさんの作品が好きで影響を受けていると思います。
必要なものだけを詰め込んだシンプルでありながら明確な意思を感じる作品を見ると、いつか自分もこんな絵が描きたいなと・・・。

 
作品も、石膏地を支持体とした伝統的な油彩画の技法をもとに、自分なりにアレンジして使っています。
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-こちらは普段使われている石膏下地。

硫酸カルシウムという食品添加物などにも使われる白い粉末です。
画材屋で売られている下地より余計なものが入っていないので純度も高く、粒子の細かさも違って気に入っています。

1.地塗り 膠液で石膏を溶いた塗料をキャンバスに4~5回塗る
2.下塗り オレンジ系の油絵の具で下塗りする

3.下書き チョーク、鉛筆、墨汁の順番で形を線で描く
4.一層目 油絵具で大きめの筆を使い大まかに色を付けていく
5.二層目 細い筆を使い描きこんでいく

6.三層目 透明色を塗り重ね色に深みを出しつつ細部を描きこむ

7.仕上げ 微調整をして仕上げ


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制作過程1
制作過程3
制作過程4
制作過程5

-作家を志そうと思ったのはいつ頃ですか?

常に憧れはありましたが具体的にいつというのはないかもしれません。
大学院在学中に公募展やコンクールなどで結果が出始め、それが展覧会のお仕事につながっていって、徐々に「もしかしていけるかも…」という感じです。

 

 -公募展やコンクールなどというと、藤井先生は2010年にビエンナーレうしく第3回全国公募絵画展で大賞を受賞されていますよね。どのような公募なのでしょうか?

名前を伏せた状態での公開審査を特徴としている全国公募のコンクールです。
その審査の透明性に惹かれて応募しました。私の時は約750人、約1000点の応募があったようです。

-公開審査とは珍しいですね!1000点という中から一人だけ選ばれるというのはすごい事ですよね。

受賞式では嬉しく誇らしい思いとともに、どこか他人事で場違いなところにいるなと感じていましたね(笑)

彼方 50S
-大賞作の「彼方」S50は公募展主催の茨城県牛久市に所有されているとのこと(^^)

-やはり昔から「水」を描いた作品が多かったんですね。
水というモチーフは身近な存在だったのですか?
生まれ育った蕨市や現在住んでらっしゃる川越市での出来事などありましたら教えてください。
私の生まれ育った蕨市は、小さな町すべてが住宅街という全国的にもトップクラスの人口密度のある町でした。
そのため決して身近に自然や水が近くにあったかといえばそうではありません。
どちらかというと水そのものに思い入れがあるというよりかは、作品の舞台装置としての造形的な美しさや描く際の面白さに興味があります。
端的に言えば「形の定まらないものが揺れ動くさま」を油絵具で描き出すのが好きで、それをするのに「水」が最も理にかなっているいうことなのだと思います。

自分でも水や光、風など形のない物を感じられるような表現を目指していますので、そのあたりを注目していただければなと。


でも動くものを描くのは大変ではないですか?

取材はカメラを使って行っています。
以前からシリーズで取り組んでいる蓮や睡蓮などは咲いている場所が決まっていますので、それをめがけて取材に行きます。
しかしそれだけでは新しい広がりがなくなってしまうので常にカメラを持ち歩き、新しいもの気になったものを取り入れるようにしています。

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-本描きに入る前のスケッチ

-なるほど。今回の個展においての新作や心境の変化などありましたら教えてください。

作品のコンセプト等は一貫して変わっておりませんが、最近の作品ではより油絵具の色彩や鮮やかさを生かしていきたいなと思って制作しています。
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-学生時代に描かれた作品も載っているポートフォリオを見せていただきました。

現在改善点として取り組んでいるのが「色」の部分であり、彩度を上げるのも一つの試みです。
藤井誠F4水と遊ぶ
新作 「水と遊ぶ」 F4

-作家として最も大事にしている心構えを教えてください。

絵を描くこと自体を楽しむことかなと思います。
制作自体は地味な作業が多く時間も手間もかかりますので、その作業そのものを楽しむことを忘れてしまうとおそらく続けていくことができないと思うので。


-今後の夢や目標はありますか?

長く絵描きを続けていくことです。
流行に左右されない普遍性のある作品を描くことで、多くの人に長く愛される作品を作っていきたいです。

-最後に、個展をご覧くださる皆様に一言お願いいたします。

私の絵は特別な名所や景勝地を描いたものではなく、身近な足元の風景を描いたもので、決して派手な絵ではありません。
しかし日常の中に隠れた、身近でありながら美しい大切な風景を描いた作品は観る人の目と心を癒してくれることと思います。
千葉では初の個展となりますので是非この機会にご高覧ください。

 

-藤井先生、ありがとうございました!
個展は明日より東武百貨店船橋店にて開催いたします!
新しい試みも楽しみな新作の数々を是非間近でご覧くださいませ。

「藤井誠絵画展-水の星-
7月12日(木)~ 7月18日(水)10:00~19:30 ※最終日は16時閉場
会場:東武百貨店船橋店 5階5番地美術 画廊
出品作家:藤井誠
作家来場日:7月12日(木)・14日(土)・15日(日)各日13時~17時

吹き抜ける風、高く広がる空、静かに揺蕩う水面。世界には美しい色が溢れています。
私はそれらの色をすくい上げキャンバスの中に閉じ込めます。
身近な足元に広がる大切な景色を描いた作品は観る人の心を癒してくれることと思います。
今回は千葉での初個展となります。是非この機会にご高覧ください。