本日より大阪のあべのハルカス近鉄百貨店にて個展を開催される佐竹佳奈(サタケカナ)先生にお話を伺いました!
-佐竹先生は小動物をモチーフとした作品を描かれていますよね!
昔から一貫してこのようなテーマだったのですか?
いえ、以前は植物がメインでした。
ですが動物も登場させたくてちょこちょこと入れてみたりしていました。
院生のときに、たまたま植物よりもすずめをメインにした作品を描いたことがあって。
すずめが可愛くて、もっといろいろな仕草をさせたくなりました。その思いが今も続いてるのだと思います。
-すずめは取材をしに?
すずめは主に庭に来たものを、カエルはお店や動物園で探しています。
文鳥は、メスの桜文鳥を飼っているのでモデルになってもらっています。
-わあ、モデルの子もいるのですね!
では、制作のコンセプトを教えていただけますか?
すずめやカエルなどをモチーフに、全般的には日常生活をテーマに描いています。
生き物たちの暮らしや私たちのものなど場面は様々ですが、大抵は私の感情や想像を加えています。
他者への感謝や自然への感動など、日々の暮らしの中には様々な感情が芽生えます。
それを当たり前にしないでいたいと思い、一枚毎に確認作業をしています。
-日常生活で感じる様々な事がインスピレーションの源になっているのですね。
「biotope」や「The Box」「 The Room」などの作品は生活環境そのものに焦点を絞っています。
「平穏と不穏」「自由と不自由」など対極な環境のある場景です。
何不自由なく過ごせるが平凡な室内と、思うままに過ごせるが危険もある外界、どちらも日常であり素敵な環境です。
現作品では平穏に身を置きつつ外界へも憧れる気持ちを作品にしています。
-そういった意味があったのですね!吊り下げられている宝石のような雫がどこかファンタジックな雰囲気を醸し出していて素敵です。
中の世界もキラキラしていて魅力的だけど外界にも出てみたい・・・とうずうずしているカエルの声が聞こえてきそうです(笑)
見方は人それぞれですので違って当たり前なのですが、そんな風に感じて頂けると嬉しいです。
作品ごとに、ある感情を感じて頂けたらと・・・。
この作品はワクワクしている、こちらはドキドキかな?など、ふと思って頂ける事が理想です。
また、土絵具を使用した作品はやはり背景の土の質感もご覧頂けたらと思います。
-土絵具とは?
天然の土や泥を使用した顔料です。
水干精製後、杉板上で薄板状に自然乾燥させます。
粒子が非常に細かく、落ち着いた自然な深みのある発色が特徴です。
-そんな絵具が日本画にもあるのですね!
磨くことで出る光沢が特徴の一つだと思いますので、毎回汗だくですが、好みの質感になるまで磨き続けます。また、一枚毎に土絵具を並べて作品の雰囲気に合った組み合わせを吟味しています。
実際に溶いたときの配合でイメージと違い、やり直すこともしばしばです。
土絵具は岩絵具とはまた違う質感や色合いになるので気に入っています。
-それは大変な作業ですね・・・磨くことで光るのですか?
そうなんです。
土の粒子はとても細かくて、磨く作業によりそれを均一かつ緻密に整えることで光沢が出ます。
その技術を昇華させたものに、左官職人の大津磨きがあります。
身近では泥団子です。
制作では1枚毎に全力で平面泥団子磨きをしてるようなものです(笑)
遊びの延長にあるということも、私の作風に合っていて気に入っています。
「おしゃれ」 F4 部分
こちらは土絵具を用いた作品の制作手順ですが⑥でこの作業を行います。
①下図
②土絵具の下塗り
③必要な部分の複写
④複写部分を岩絵具で描く
⑤土絵具の上塗り
⑥布での磨き
⑦ドーサ引き
⑧複写
⑨岩絵具で描き上げ完成
-行程がいくつもあるのですね・・・!
この緑色のものも土なのですか?
ロシア緑土といいます。他にはイタリア緑土とボヘミア緑土があります。
制作に使用しているものは天然の土を精製されたものを使用していて、産地はイタリア、イギリス、ギリシャ、ロシア等多岐に渡ります。
日本にも様々な色の土があり、実際に採取されている方もいますね。
私もいつかは・・・と思っています。
-土絵具は知れば知るほど奥が深いのですね!
ところで佐竹先生は東京藝術大学の中島千波先生の研究室ご出身ですよね。
入られた理由などを教えて下さい。
予備校生のときに波濤の會等を拝見して、学生のうちから発表の機会に恵まれていることに驚きました。
また、自分の作風を突き詰められる点も魅力がありました。
-作家として活躍されている方もたくさんいらっしゃいますよね。
では作家を志され始めたのはその頃からですか?
2浪目くらいからです。
美大受験生は皆さん同じだと思いますが、毎日毎日、本当に毎日絵を描いていましたので、大学に進んでからもこのままでは終われない、と思うようになっていきました。
ですが現在作家としてお仕事があるのは本当に幸運で、ありがたいことです。
-影響を受けた作家さんはどなたですか?
川端龍子先生の「草炎」「草の実」です。
予備校生時代に拝見したのが最初です。
影響を受けたなんて差し出がましいですが、衝撃はかなり受けました。今も拝見する度に驚嘆します。
-「草炎」は東京国立近代美術館に所蔵されていますね。
どのようなところに衝撃を?
植物の力強さを感じられるところです。
モチーフはよく見る雑草たちですが、あんなに活き活きと描くことができるのかと感嘆します。
シンプルで誤魔化しの効かないところも格好いいなあと。
-作家として最も大事にしている心構えを教えてください。
感謝することだと思います。
自分本位ではありますが、作品を万人に受け入れてもらうことは不可能ですので、したいように表現していこうと思っています。
このように取り上げて下さる方がいらっしゃること、描く環境を整えてくれる家族がいることはとても幸運なことで、そこから初めて制作が出来るのだと思っています。
-今回の出品作の中でもご家族が登場している作品があるのだとか。
はい。
「空翔る」です。
この作品は今回チャレンジした作品で、表情のある生き物はいませんがそれだけに足跡のリズムや空の色にこだわりました。
「空翔る」 P30
そして足跡は長男のサイズです。
周囲のシロツメクサもどこかに四つ葉があります。
彼が実際に経験したかも知れないワクワクを、絵を通して感じて頂ければと思います。
ちなみに「空の散歩」は次男です(笑)
「空の散歩」 F4
-実際の足のサイズというのがユニークですね!
佐竹先生の作品は温かく優しい雰囲気がありますがこちらは特に愛情のようなものを感じます。
今後の夢や目標を教えてください。
発表する機会を失わずにいけましたら素敵です。
そして頂いたお仕事に見合う作品を、自分の表現を見失わずに制作し続けたいと思います。
-最後に、個展をご覧くださる皆様に一言お願いいたします。
ご覧下さいますこと、誠にありがとうございます。
僭越ではございますが、ほっと一息ついて頂けましたら幸甚に存じます。
-佐竹先生、ありがとうございました!
個展は本日よりあべのハルカス近鉄百貨店にて開催いたします!
大阪では初の個展になります。
皆様是非ご高覧下さいませ!
「佐竹佳奈 日本画展-ちいさなものたちへ-」
8月15日(水)~ 8月21日(火)
10:00~20:00 ※最終日は17時閉場
会場:あべのハルカス タワー館11階 アートギャラリー
出品作家:佐竹佳奈
作家来場日:8月17日(土)13時~17時