武蔵原裕二「まなざし」「願いのソラ」神戸大丸個展5/26まで
岩絵の具が記憶する体温──武蔵原裕二「まなざし」「願いのソラ」
神戸大丸 8階ギャラリートアートにて、「第二回武蔵原裕二日本画展 ─飛んで、走って、泳ぐ─」が開催中だ(5月20日〜26日)。神戸大丸での初個展。本日5月24日は作家在廊日にあたる。
武蔵原裕二の動物画を前にすると、指先が画面に向かって自然に伸びる。輪郭線が、ない。画面を立てた状態で筆を直角に当て、岩絵の具の粒子で一本ずつ毛を起こしていく。白い体毛には、まず黄白色の岩絵の具で下層を描き、その上から胡粉を重ねる。二段階のプロセスによって鉱物の粒子が光を複雑に屈折させ、画面の表層に柔らかな起伏と透明感が生まれる。その蓄積が呼び起こすのは、「触れたい」という原初的で抗いがたい衝動だ。
「まなざし」は、神戸王子動物園のシマウマを描いた作品である。縞模様の黒と白の境界には線ではなく密度の推移だけがあり、そこに生き物の呼吸が宿る。神戸大丸での初個展に、この街の動物園に暮らす生き物を持ち込んだこと。作家と土地が一枚の絵によって静かに結ばれる瞬間がここにある。
「願いのソラ」は背景に具体物を描かず、色面の温度だけで季節と空気を伝える。描かれなかった余白の中に、動物の息遣いの残響が漂う。武蔵原が一貫して追い求めてきた——画面の外側にまで続く生命の気配が、ここに凝縮されている。
会場には150号大作「歩み」をはじめ、仔ライオン、仔シロクマ、仔白虎、キングペンギン、メンフクロウ、サーバル、鯉など、空・陸・水を生きる動物たちが集う。
武蔵原裕二。1976年岐阜県生まれ。愛知県立芸術大学大学院日本画修了。日本美術院院友。郷さくら美術館パブリックコレクション収蔵。
「まなざし」P8号(W333×H455mm)/雲肌麻紙、岩絵の具/2025年/¥528,000(税込・額込)
「願いのソラ」F6号(W410×H318mm)/雲肌麻紙、岩絵の具/2025年/¥396,000(税込・額込)
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