A Wind-Up Bird Jumps into a 200-Year-Old Snowscape — Kenji Shimizu’s “Setchū Hinoki Maidori-zu”

2026.07.28

雪中檜舞利鳥図

酒井抱一の雪景色にゼンマイの鳥が跳ぶ——志水堅二「雪中檜舞利鳥図」

志水堅二の個展「ブリドリーの時空雅行 雅の源流から夏の灯」が、Gallery Seek(カレッタ汐留B1F)にて2026年8月1日まで開催されている。会期は残り4日。

本展で注目したい一幅が「雪中檜舞利鳥図」である。江戸琳派を代表する絵師・酒井抱一(1761–1828)が手がけた「十二ヶ月花鳥図」のうち、雪をまとった檜を描いた冬の一幅を下敷きに、志水が元の鳥をブリドリーへと描き替えた作品だ。

雪の幹と枝、足もとにこぼれる赤い実はそのままに、赤・黄・青・緑・紫の五色のブリドリーが枝を行き交う。ブリドリーは「ブリキの鳥」と「人形(ドール)」を掛けた、ゼンマイ仕掛けのキャラクター。翼では飛べず、ゼンマイの力で跳ぶ。錆が浮いても、バネが止まるまで跳び続ける姿に、志水は「時間の象徴」という意味を込めている。プラスチックにはない、いつか朽ちて土に還るブリキの素材感——そこに宿る記憶と不完全さへの眼差しが、この作家の制作の根底にある。

H1840 × W530mm、木製パネルにアクリル絵具・アルキド絵具・金銀箔によるミクストメディア。東洋の古典的図案と西洋の画材を一枚の画面に溶け合わせる手法は、日本のキャラクター文化を絵画として成立させるという志水の長年の目標を体現している。

本作は酒井抱一の十二ヶ月花鳥図から四季を表す四幅を選んだ連作——桜雉子舞利鳥図(春)、立葵紫陽花舞利鳥図(夏)、柿目白舞利鳥図(秋)、雪中檜舞利鳥図(冬)——の冬にあたる一枚であり、四幅対としてのみ販売されている。季節は分かちがたく連なり、一幅を手にするとは四季のすべてを受け止めるということだ。

古典の沈黙のなかで、小さなゼンマイの鼓動が聞こえる。二百年を隔てた二つの時間が一本の檜の上で交差するこの作品に、あなた自身の時間を重ねてみてほしい。

▶ 作品詳細・お問い合わせ:https://art-scenes.net/ja/artworks/56289

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