変わる素材で、変わるものを描く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

2026.08.16
変わる素材で、変わるものを描く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

変わる素材で、変わるものを描く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

五月女佳織 作家ページ
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変わる素材で、変わるものを描く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

日本画家 五月女佳織の個展「深淵」が、いよいよ 2026年8月22日(土)から8月30日(日)まで Gallery Seek で始まります。これまで「線」「重ねる」「小さな生き物」の話を書いてきました。最後は、素材そのものの話です。

■ 銀は、いつか必ず黒くなる

動画に出てくる黒い箔は「黒箔」といいます。銀箔をあらかじめ変色させたもので、作家は「いぶし銀色」と呼んでいます。

銀は、放っておいても空気の中で黒くなっていきます。誰の手も加えなくても変わってしまう。黒箔は、そのいずれ起きる変化を先に起こしてしまった箔ということになります。

いっぽう金は、ほとんど変わりません。動画の終盤で扇面に撒いているのが、その金箔です。深い青の上に金の粒が散っていく場面は、この動画のなかでも特にきれいなところだと思います。

変わる素材と、変わらない素材。作家はその両方を、性質を承知のうえで選んでいます。

■ 日本画の材料は、ほとんどが自然物

あらためて並べてみると、日本画で使うものはほとんどが自然から採られています。

岩絵具は鉱物を砕いた粒。膠(にかわ)は動物から採った接着剤。絹はもともと蚕がつくった糸で、和紙は植物の繊維。金や銀は金属です。

工業製品のように「変わらないこと」を前提につくられた素材ではありません。湿度で伸び縮みし、光で褪せ、空気で変色する。そういうものを組み合わせて、一枚の絵をつくっています。

■ 「静かに姿を変えていきます」

今回の個展に寄せて、作家はこう書いています。

「ただそこに在るだけで、季節を重ね、光を受け、静かに姿を変えていきます」

これは描かれている植物についての言葉です。けれど、描くための材料にもそのまま当てはまります。

変わっていくもので、変わっていくものを描いている。しかも作家は、東京藝術大学大学院で文化財の保存修復を学んだ人です。古い絵が何十年、何百年かけてどう変質するかを、実物を通して知っている。そのうえで、変わる素材を選んでいます。

黒箔は、その姿勢が最もはっきり出ている材料かもしれません。変色を「劣化」として避けるのではなく、変色した状態を最初から色として使う。なお、これは弊廊の読み方であり、作家がそう説明したものではありません。

■ 五月女佳織について

五月女佳織(そうとめ かおり)。栃木県栃木市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻 保存修復日本画 修了。

受賞・入選:2026年 第81回春の院展 入選/2025年 再興第110回院展 入選/2024年 第79回春の院展 入選・再興第109回院展 入選
主な個展:2025年 Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)/2024年「瞬」池袋東武(東京)・東武船橋(千葉)/2023年 大丸神戸・大丸京都・Gallery Seek(東京)

■ 会場で見ていただきたいこと

箔を使った作品の前では、少し体を動かしてみてください。金や銀は光を反射するので、立つ位置によって明るさが変わります。正面から見たときと斜めから見たときで、同じ画面が別の表情になります。

写真では絶対に出ない部分です。会期は8月22日(土)から30日(日)まで。作家は27日(木)13:00–17:00 に在廊します。

■ 開催概要

深淵 / 五月女佳織 日本画展
会期:2026年8月22日(土)– 8月30日(日)
時間:11:00–18:00(最終日は17:00まで)
会場:Gallery Seek(東京都港区東新橋1-8-2 カレッタ汐留 B1F)
作家在廊日:8月27日(木)13:00–17:00
アクセス:都営大江戸線「汐留駅」徒歩1分/JR「新橋駅」徒歩7分(地下通路利用)
お問い合わせ:TEL 050-5491-4949 / info@galleryseek.jp

▶ Gallery Seek:https://galleryseek.jp/