花は、重ねたあとに咲く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

2026.08.14
花は、重ねたあとに咲く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

花は、重ねたあとに咲く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

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花は、重ねたあとに咲く — 五月女佳織 日本画展「深淵」

日本画家 五月女佳織の個展「深淵」が、2026年8月22日(土)から8月30日(日)まで Gallery Seek で始まります。これまで展覧会の全体像と、制作の出発点である「線」の話を書きました。今回は色の話です。

■ 日本画の絵具は、溶けない

日本画で使う岩絵具は、鉱物を砕いた粒子です。水彩絵具やアクリルのように水に溶けるのではなく、砂のような粒がそのまま画面に載ります。

そのままでは定着しないので、膠(にかわ)という動物性の接着剤と混ぜます。膠が接着剤、岩絵具が骨材。壁を塗るモルタルに近い関係です。

粒子なので、一度に厚く置くことはできません。厚く置けば乾く途中で剥がれます。だから薄く置いて、乾かして、また置く。この反復で画面をつくっていきます。

■ 同じ場所に、何度も筆が戻る

動画を見ていると、筆が同じ花びらに何度も戻ってきます。塗り残しを直しているのではなく、層を積んでいるのです。

下の層が乾いてから次を置く。重ねるほど色は深くなり、粒子の重なりが微妙な陰影を生みます。花びらに陰を含ませ、紅を差し、最後に花芯を仕上げる。曼珠沙華の紅、雪椿の赤、夜桜の白——花の色は、重ねの一番上に置かれます。

一輪の花に何層あるのかは、完成した画面からは数えられません。けれど層の数は、色の深さとして残ります。

■ 「季節を重ね、光を受け」

今回の個展に寄せて、作家はこう書いています。

「ただそこに在るだけで、季節を重ね、光を受け、静かに姿を変えていきます。森の奥へ足を進めると、色は次第に深まり、音は遠ざかり、目に映るものは少なくなっていきます」

植物が季節を重ねるように、絵具も層を重ねる。「重ねる」という同じ言葉が、描かれる対象と描く行為の両方にかかっています。

花が咲くというより、重なった時間がある厚みに達したときに、花がそこに在る。そういう見え方をする画面だと思います。なお、これは弊廊の読み方であり、作家がそう説明したものではありません。

■ 五月女佳織について

五月女佳織(そうとめ かおり)。栃木県栃木市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻 保存修復日本画 修了。

古い絵の修復は、絵具の層を読む仕事でもあります。どの層が何でできていて、どの順で置かれたか。その知見が、自身の制作で絹への岩絵具の載せ方や箔の扱いを支えています。

受賞・入選:2026年 第81回春の院展 入選/2025年 再興第110回院展 入選/2024年 第79回春の院展 入選・再興第109回院展 入選
主な個展:2025年 Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)/2024年「瞬」池袋東武(東京)・東武船橋(千葉)/2023年 大丸神戸・大丸京都・Gallery Seek(東京)

■ 会場で見ていただきたいこと

近づくと、岩絵具の粒子が見えます。光の角度で、粒がわずかに光ります。離れると、その粒は色の深さに変わります。

同じ花が、立つ位置で違って見える。会場ではぜひ、一度近づいて、それから離れて見てください。

■ 開催概要

深淵 / 五月女佳織 日本画展
会期:2026年8月22日(土)– 8月30日(日)
時間:11:00–18:00(最終日は17:00まで)
会場:Gallery Seek(東京都港区東新橋1-8-2 カレッタ汐留 B1F)
作家在廊日:8月27日(木)13:00–17:00
アクセス:都営大江戸線「汐留駅」徒歩1分/JR「新橋駅」徒歩7分(地下通路利用)
お問い合わせ:TEL 050-5491-4949 / info@galleryseek.jp

▶ Gallery Seek:https://galleryseek.jp/