線が消えて、色が残る — 五月女佳織 日本画展「深淵」
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線が消えて、色が残る — 五月女佳織 日本画展「深淵」
日本画家 五月女佳織の個展「深淵」が、2026年8月22日(土)から8月30日(日)まで Gallery Seek で始まります。前回は展覧会の全体像をご紹介しました。今回はもう少し細かい話、「線」について書きます。
■ 日本画は、線から始まる
制作の順番は、おおよそ決まっています。
まず鉛筆で下描きを起こす。次にその下図を、墨の線で写しとる。それから絹や紙に向かい、細い筆で輪郭を引いていく。この輪郭線を、日本画では「骨描き」と呼びます。文字通り、画面の骨をつくる線です。
花の色が乗るのは、そのあとです。
先に線で形を決め、そこに色を重ねていく。だから最初の一本を引く時点で、その絵の骨格はほぼ決まってしまいます。
■ そして、線は隠れていく
骨描きを終えたあと、岩絵具を膠で練って何層も重ねていくと、最初に引いた線は絵具の下に沈んでいきます。厚く塗り重ねた部分では、もう見えません。完成した画面で私たちが見ているのは、色と光です。
けれど線が消えたわけではありません。花びらの向きも、葉の重なりも、茎の伸びる角度も、すべて最初の線が決めています。見えないまま、画面を支えている。
■ 「目に映るものは少なくなっていきます」
今回の個展に寄せて、作家はこう書いています。
「ただそこに在るだけで、季節を重ね、光を受け、静かに姿を変えていきます。森の奥へ足を進めると、色は次第に深まり、音は遠ざかり、目に映るものは少なくなっていきます。その静けさの中で、花だけがわずかに息づき、見る者をさらに奥へと導いていくように感じました」
森の奥へ進むほど、見えるものは減っていく。それでも——というより、だからこそ——奥へ導かれる。
この感覚は、線が隠れながら画面を支えていく描き方と、どこかで重なっているように思います。見えているものが減った先に、まだ何かが残っている。なお、これは弊廊の読み方であり、作家がそう説明したものではありません。
■ 五月女佳織について
五月女佳織(そうとめ かおり)。栃木県栃木市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻 保存修復日本画 修了。
古い絹や紙の絵を修復するには、それがどう描かれたかを、材料の側から理解していなければなりません。線がどこにあり、絵具が何層になっているか。その知見が、自身の制作で絹への岩絵具の載せ方や箔の扱いを支えています。
受賞・入選:2026年 第81回春の院展 入選/2025年 再興第110回院展 入選/2024年 第79回春の院展 入選・再興第109回院展 入選
主な個展:2025年 Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)/2024年「瞬」池袋東武(東京)・東武船橋(千葉)/2023年 大丸神戸・大丸京都・Gallery Seek(東京)
■ 会場で見ていただきたいこと
「涼の小径」(150号・紙本彩色)のような大作では、絵具の層が厚くなるほど線は見えなくなります。それでも近づいて見ると、花びらの縁や葉の際に、細い線がわずかに顔を出している箇所があります。
隠れた骨格が、どこで表に出てくるか。会場ではぜひそこを探してみてください。
■ 開催概要
深淵 / 五月女佳織 日本画展
会期:2026年8月22日(土)– 8月30日(日)
時間:11:00–18:00(最終日は17:00まで)
会場:Gallery Seek(東京都港区東新橋1-8-2 カレッタ汐留 B1F)
作家在廊日:8月27日(木)13:00–17:00
アクセス:都営大江戸線「汐留駅」徒歩1分/JR「新橋駅」徒歩7分(地下通路利用)
お問い合わせ:TEL 050-5491-4949 / info@galleryseek.jp
▶ Gallery Seek:https://galleryseek.jp/