岡﨑実央「CAPTURED [VINYL EDITION] #02」── 一枚の絵画に封じられた360度の視座

2026.04.09

岡﨑実央「CAPTURED [VINYL EDITION] #02」── 一枚の絵画に封じられた360度の視座

写真は便利だが、残酷でもある。撮影者が立った一点からの、たったひとつの角度しか記録できない。

岡﨑実央がキュビズムを選ぶ理由は、その限界への抵抗にある。プロレスのリングは四方を観客が囲む。正面席から見上げる背筋の隆起と、対角線上の席から捉える技の弧度と、二階席から俯瞰する身体の幾何学。同じ瞬間に、まったく異なる光景が360度に広がっている。岡﨑はそれらを分解し、再構成し、ひとつの画面の中に同居させる。

「CAPTURED [VINYL EDITION] #02」(300 x 450 mm/キャンバスにアクリル)は、その手法にさらにレコードジャケットという意匠を重ねた「VINYL EDITION」シリーズの一作である。レコード盤は溝を針がなぞることで音楽を再生する。この絵もまた、視線という針を落とすたびに異なる経路をたどり、そのつど別の局面を浮かび上がらせる。一度見て終わる絵ではない。繰り返しの鑑賞のたびに、鑑賞者自身の視点の変化がそのまま作品の変化になる。

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業制作優秀賞で卒業し、その後プロレス専門誌『週刊プロレス』の編集記者として約2年間リングサイドに立った経歴。デザインの構造的思考と、リングの熱を至近距離で浴びた身体的記憶。その二つが交差する地点に、岡﨑実央の制作は立っている。

この作品は、あなたがどの角度から見るかによって応答を変える。それはつまり、あなた自身の視点が問われているということでもある。

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