錆びたゼンマイの鳥が、日本美術の時空を跳ぶ──志水堅二個展「ブリドリーの時空雅行」

2026.07.08

錆びたゼンマイの鳥が、日本美術の時空を跳ぶ──志水堅二個展「ブリドリーの時空雅行」

錆びたゼンマイの鳥が、日本美術の時空を跳ぶ──志水堅二個展「ブリドリーの時空雅行」

飛ぶことができない鳥は、それでも跳ぶ。ゼンマイが完全に錆びつくその瞬間まで。

志水堅二が古いブリキのおもちゃから生み出したキャラクター「ブリドリー」は、ポップな外見の奥に「時間の経過」という重い主題を抱えている。プラスチックのように均質に劣化するのではなく、錆び、塗装が剥がれ、やがて土に還る──その不完全な物質の変容にこそ、志水は生命の手触りを見出した。

本展「ブリドリーの時空雅行 雅の源流から夏の灯」は、この鳥を日本美術史の深部へ送り出す試みである。建仁寺所蔵の国宝に着想を得た大型屏風『風神雷神図屏風』では、風と雷のダイナミズムがブリドリーの姿を通じて現代の絵画言語で再構築される。尾形光琳の燕子花図から連なる系譜を引き受けた『燕子花舞利鳥図』では、キャラクターが古典の格式の中で絵画的自立を果たす。

最も注目すべきは、古典の花鳥掛軸に作家自身が直接介入した連作群だ。『菊に舞利鳥図』『桜雉子舞利鳥図』『雪中檜舞利鳥図』など、実在する古画に描かれていた鳥をブリドリーへと描き替え、あるいは描き加える。江戸時代の絵具層の上に現代の筆致が重なる──作品の物質的な成り立ちそのものが「古典と現代の融合」を証言している。立体作品『a un』は神獣・守護神としてのブリドリーの側面を三次元で立ち上げ、『Tea Cup Bridolly』は日常の器の中にキャラクターの生命を宿らせる。

1971年名古屋生まれ。多摩美術大学で油画を修め、東京藝術大学大学院で中島千波に師事した志水は、木製パネルにアクリルで下地を築き、アルキド絵具で主線を引き、金箔・銀箔を古典技法として画面に取り込む。西洋と東洋、画材と技法の混淆は、アニメや漫画で育った世代が日本美術の正統な系譜を自覚的に引き受けるための方法論である。葛飾北斎が「日本初の漫画家」と称されるように、この国の美術にはもともとキャラクター的想像力が脈打っていた。志水の仕事は、その脈動を現代の画面の上で再び鳴らすことに他ならない。

7月25日・26日には「カレッタ汐留こども夏まつり2026」と連動し、巨大ブリドリーバルーンの展示、作家本人による作品解説、お子様向け塗り絵体験を実施。世代を超えて、日本の視覚文化の過去と未来に触れる場が開かれる。

志水堅二 個展「ブリドリーの時空雅行 雅の源流から夏の灯」
会期:2026年7月24日(金)〜8月1日(土)
開廊時間:11:00〜18:00(最終日17:00まで)
会場:カレッタ汐留 地下1階 Gallery Seek(東京都港区東新橋1-8-2)

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