赤が先に在った——田中ラオウ「火花」が明かす、にじみ起点の制作哲学
赤が先に在った——田中ラオウ「火花」が明かす、にじみ起点の制作哲学
虎を描き続けてきた田中ラオウが、初めてこのモチーフに「火花」という名を与えた。
パネルの上を赤いアクリルが走る。飛沫が散り、にじみが偶発的な色彩の地形を描く。田中ラオウの制作はそこから始まる。多くの画家が形態から出発するのに対し、彼はにじみと色彩の気配を先に読み取り、そこから虎の表情を逆算的に構築していく。本作「火花」では、赤という色が持つ衝突のエネルギーが、虎の眼光の鋭さを不可避なものにしている。
2014年、カリカチュアの世界大会ISCAで総合優勝。対象の本質を一本の線で射抜く観察眼を極めた作家が、2016年に画家へ転身して以来取り組んでいるのは、にじみという制御不能な現象との対話だ。精密さと偶発性。この矛盾した二つの力がパネルの上で拮抗するとき、画面には独特の緊張が生まれる。漫画の必殺技のように一瞬で視界を奪いながら、その残像が網膜の奥に長く留まるのは、この拮抗の構造ゆえだろう。
15M(652×455×30mm)というサイズは、壁面を圧倒する大きさではない。しかしその画面の中に封じ込められた色と形の格闘は、サイズを超えた密度を持つ。赤のにじみの端、虎の眼の輪郭、絵具の厚みが変わる境界線——ルーペで覗くように近づいたとき、制作の時間と判断の連鎖が画面の表層に浮かび上がる。
個展「閃」はGallery Seek カレッタ汐留B1Fにて2026年4月開催中。本作はその出品作の一点である。
作品のお問い合わせはGallery Seekまで。
田中ラオウ「火花」
15M(652×455×30mm)
mixed media on panel
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