田中ラオウ「Black Foundation」——漆黒を礎にした虎
田中ラオウ「Black Foundation」——漆黒を礎にした虎
色がないのに、目が離せない。
田中ラオウ「Black Foundation」。アクリル画(モノクロ)、20P(727×530mm)。虎をモチーフとしたこの作品は、墨のような深い黒をキャンバスの礎として敷き、そこから虎の身体——牙、爪、筋肉、視線——だけを浮上させる構成を取っている。
田中は1985年北海道生まれ。カリカチュアアーティストとして2014年にアメリカ・ネバダ州のISCA conventionで総合優勝、殿堂入りを果たした。2016年に画家へ転身し、画歴ゼロから初個展を成功させた異例の経歴を持つ。アクリルと墨を主な画材とし、動物の躍動と生命の深度をテーマに制作を続けてきた。
本作で注目すべきは、無彩色が生む逆説的な解像度だ。色の情報がない分、虎の肩甲骨を覆う筋繊維の隆起、毛流が作る微細な濃淡のグラデーション、光を弾く牙の稜線が、鮮烈に際立つ。余白と漆黒がせめぎ合う境界には、刀が空気を裂くような刹那の緊張が走る。
「Foundation」——礎。この題名は、表面の華やかさを削ぎ落とした先に残る、存在の地盤を指しているように読める。田中は社会に馴染むために纏ったものを脱ぎ、己を掘り下げることの重要性を一貫して語ってきた。この漆黒は、その内省の深度そのものだ。
虎の視線の先に広がる余白は、何も描かれていない。だからこそ、鑑賞者自身の内側へと接続する。あなたの「礎」には、何が埋まっているだろうか。
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