志水堅二《風神雷神図屏風》──ブリキの鳥が、四百年の系譜に立つ

2026.07.29

志水堅二《風神雷神図屏風》──ブリキの鳥が、四百年の系譜に立つ

志水堅二《風神雷神図屏風》──ブリキの鳥が、四百年の系譜に立つ

俵屋宗達が風神雷神図を描いてから約四百年。尾形光琳が模写し、酒井抱一がさらに継いだこの図像は、日本美術史上最も長い反復の系譜を持つ主題のひとつである。その列に、志水堅二が新たな一双を加えた。ただし、風神も雷神も人間の姿をしていない。ブリキの鳥──「ブリドリー」の姿で、金屏風の上に立っている。

《風神雷神図屏風》(H1210×W2120mm)。木製パネル全面に金箔を敷き詰め、墨のたらし込みで雲を沈めた地の上に、右隻には連太鼓を背負う雷神ブリドリー、左隻には緑の風袋と赤い珠を携えた風神ブリドリーが配される。素材はアクリル下地にアルキド絵具、金箔、墨。東洋の古典的図案と西洋の画材が一枚の屏風の中で交差するミクストメディアだ。

ブリドリーは「ブリキの鳥」と「人形(ドール)」を掛け合わせた、志水堅二の分身ともいえる存在である。飛ぶ力を持たず、外見にサビを纏いながらも跳び続ける健気な鳥。プラスチックにはない、ゼンマイ仕掛けのブリキのおもちゃが持つ「朽ちていつか土に還る」素材感に惹かれる志水にとって、ブリドリーは時間そのものの象徴だ。鳳凰にも龍にも姿を変えてきたその鳥が、この作品ではついに風と雷を司る神にまで到達した。

金箔の永遠性と、朽ちゆくブリキの有限性。その矛盾が一枚の屏風の上で共存している。日本のキャラクター文化を絵画として成立させるという志水の長年の命題が、四百年の伝統を背負うこの図像の中で、最も鮮烈な形をとった。

1971年名古屋生まれ。多摩美術大学卒業後、同大学助手を経て、東京藝術大学大学院デザイン専攻修了。先祖は尾張藩に仕え、曾祖父は輸出向け陶磁器業を営んでいた。日本の伝統と海外への眼差しが、この作家の血脈にはもとから流れている。

▶ 作品詳細・お問い合わせ:https://art-scenes.net/ja/artworks/56285

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