原田武《夢見鳥》— 個展「断片の景色」

2026.07.09

原田武《夢見鳥》— 個展「断片の景色」

金属に留められた、蝶の一瞬——原田武《夢見鳥》

「夢見鳥(ゆめみどり)」は、蝶の古い呼び名である。荘子の説いた「胡蝶の夢」——夢のなかで蝶になった自分と、目覚めたのちの自分、そのどちらが実かが分からなくなるという寓話——に連なる言葉だ。金属造形作家・原田武は、その古語を一片の蝶に与えた。

素材は銀、真鍮、ステンレス。翅に宿る色彩の移ろいは、塗料によるものではない。金属そのものの化学変化と、金箔・真鍮箔の反射、そして漆の艶によって立ち上がっている。鍛金で叩き出された各パーツは中空構造に組まれ、蝶という軽やかな存在にふさわしい軽さを得た。とまり木となる桐の台座は、作品のまわりに漂う空気そのものを見せるために選ばれている。

翅の薄さと、金属の重さ。本来であれば相容れないはずのふたつの質感が、ひとつの姿のなかで静かに拮抗する。それは、幼い日に夢中で蝶を追いかけた時間と、その記憶を大人になって反芻するいまとの、ふたつの時間が重なり合う瞬間でもある。

本作は個展「断片の景色」の出品作。会場では、朽ちたタイルや小さな生き物といった日常の断片が、金属の内側に刻み込まれた景色として並びます。会期は2026年7月11日(土)まで、Gallery Seek(カレッタ汐留B1F)にて。

▶ 作品詳細・お問い合わせ:https://art-scenes.net/ja/artworks/56162
▶ Gallery Seek:https://galleryseek.jp/