内田有 cool it (box)

2026.06.09

内田有 cool it (box)

「かわいい」の臨界点——内田有《cool it (box) — slv / ylw》

コンビニの冷凍庫に手を伸ばすとき、私たちはほとんど何も考えていない。赤いロゴ、「6本入」、「ミルク味」。パッケージのデザインが発する信号は、思考を迂回して指先に届く。内田有は、その無意識の回路を作品の入口に据える。

《cool it (box) — slv / ylw》は、2016年に制作されたミクストメディア作品。日本のアイスキャンディー箱のフォーマットを精緻に再現したボックスの内側に、温暖化で居場所を失いつつあるホッキョクグマの姿が封じ込められている。シルバーを基調としたslvと、蛍光グリーン・ピンク・イエローが画面を覆うylw——2つのボックスは、ポップな色彩の明度を変えることで、同じ構造の中に異なる温度の批評性を宿す。

東京藝術大学で鋳金を起点にガラス造形へと移行し、イギリス・University for the Creative Artsへの留学でコンセプチュアルな思考の骨格を得た内田。ガラス鋳造と異素材が重なる表面は、透明と不透明の境界を物質として立ち上げ、溶けかけた氷菓のような儚さと奥行きを同時に湛える。

タイトルの「cool it」は、環境問題の絵本に記されていた「頭を冷やせ」というプラカードの言葉に由来する。しかし内田がここで差し出しているのは、環境保護の啓発ではない。シロクマの危機を知りながら、消費の快楽を手放せない——その人間の業を、最もポップな包装紙で手渡すことの残酷さだ。かわいいと思った瞬間、もう引き返せない。

ミクストメディア(ガラス鋳造+異素材)
H240 × W250 × D80 mm
各¥55,000(税込)

Gallery Seekにて開催中の個展「POP-UP COUNTER」は本日5日目。会期は2026年6月5日(金)から6月13日(土)まで。

▶ 作品詳細・お問い合わせ:https://art-scenes.net/ja/artworks/55739 (slv)/ https://art-scenes.net/ja/artworks/55740 (ylw)

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