作品について
仰向けに寝転がり、両の拳を胸の前で握った童子の小品。ブロンズの塊としての重みがそのまま作品の役割になっており、紙を押さえる文鎮として使うことを想定している。掌にすっぽり収まる寸法ながら、上に向けた顔つきと丸めた背中に、まどろみから覚めたばかりのような気配がある。 【ぶんちん坊というモチーフについて】 籔内佐斗司の童子は「ほとけさまの使い」であり、目に見えない「いのち」の姿を形にしたものである。その童子に文鎮という実用の役目を与えたのが本作で、机の上に置かれ、日々手に触れられることを前提としている。籔内は鋳造ブロンズを、人々の日常へアートを浸透させる「分身(おふだ)」のような存在と位置づけており、この小さな文鎮はその考えを最も直接に体現した形といえる。 【素材・技法について】 木彫で原型を起こしたのち鋳造したブロンズ。鋳肌は落ち着いた茶褐色に仕上げられ、頬や拳、膝の張りに沿ってわずかに明るみが差す。台座を設けず、身体そのものが接地面となるよう構成されている。 【見どころ】 横から見たときの、背中から腰にかけての曲線に注目したい。寝転がる姿勢が重心を低く保ち、文鎮として据わりのよい形になっている。使ううちに手の脂が乗り、色艶が変わっていくことも含めて完成する作品である。
籔内佐斗司の作品