作品について
上半分はターコイズ、下半分はピンクへと転じる水面に、金箔の光が斜めに射し込む。奥から手前へ向かって金の斑が連なり、水の起伏に沿って形を変えていく。910mm四方の画面に、岸も空も描かれない。 【作品について】 《水景色 Waterscape》連作のうち、澄んだ光のもとで水を捉えた一点である。ターコイズからピンクへの移行は、水深の違いとも、空の色の映り込みとも読める。菅は特定の場所を描写するのではなく、水そのものが持つ色と光の変化を主題としており、本作でも具体的な地形は示されない。 【モチーフについて】 「実体のないもの」である水を、反射と屈折という現象によってのみ画面に定着させる。金魚鉢を真上から眺めた原体験に発する真俯瞰の視点は、水平線を消し、見る者を水面そのものと向き合わせる。 【素材・技法について】 雲肌麻紙に天然岩絵具と金箔。混色を避け、絵具の粒子そのものの色でターコイズとピンクを立ち上げている。金箔は水の反射を担い、西洋の遠近法に頼らずに奥行きをつくる。白い粒は胡粉によるもので、「胡粉は特に絵画らしい厚みが出ます」と菅が語るとおり、水面に浮かぶ細かな光として物質的な厚みを持つ。 【見どころ】 金の斑は奥ほど大きく密に、手前ほど小さく散る。この配置だけで距離が生まれており、線遠近法を用いずに空間を成立させる日本画の方法が働いている。
菅かおるの作品