作品について
金地の正方形のなかに、円形の暗い水景が広がる。黒と藍のなかに、白い泡が塊となって浮かび、細い線で仕切られた気泡の連なりが中央に集まる。桃色の珊瑚状のかたちと、貝殻がひとつ、暗がりに沈んでいる。 【作品について】 《Origin》は菅かおるが深海を主題としたシリーズで、2019年の個展「光と海」(長性院・Gallery PARC)の後に刊行された作品集の題名でもある。本作はその系譜に連なる一点で、水面ではなく水の底を見ている。 【モチーフについて】 菅は深海について「海の底から生命が生まれてきたというか、生き物とか生命の力みたいなものが生まれる源があると思っていて、そういうものがちょっと生まれてたりとか、形が作られている途中みたいな、そういうものを表現したくて」と語る。画面の白い塊は特定の生物ではなく、まだ形になりきる前のものとして描かれている。貝殻や珊瑚は、実際に海辺で拾ったり店で集めたりしたものからインスピレーションを得ており、「長く伸びる曲線も、実は貝殻の流線的な模様からきている」という。 【素材・技法について】 雲肌麻紙に天然岩絵具と箔。円の外側には箔が置かれ、内側の暗い水と対をなす。白い泡は胡粉を粒として無数に置いたもので、大小の粒が集まって塊をつくる。粒子の大小で絵具が上下する日本画の性質を利用し、泡の層の下から藍や黒が透ける。 【見どころ】 中央の細かな気泡の連なりに注目したい。ひとつずつ輪郭線で仕切られており、そこだけ密度が高い。生命が形を結ぶ手前の状態という主題が、この部分に集約されている。
菅かおるの作品