作品について
縦長の画面に、細い月の下の渓流が広がる。灰銀の空に星が瞬き、両岸の草叢と杉木立は黒く沈む。水は白く光りながら手前へ流れ、その上を蛍の光が点々と昇る。 【作品について】 《蛍のいる水景色》と同じ夏の夜の主題を、縦位置で構成した一点である。横位置が場の広がりを見せるのに対し、本作は流れの奥行きを強調し、視線を画面の奥へと導く。空の面積が広く取られ、新月と星がその上端を占める。 【モチーフについて】 新月は月がほとんど見えない夜であり、そのぶん蛍の光と水の輝きが際立つ。菅は水を「光の強さによって捉えどころなく変幻自在に輝く」ものとして捉えており、月明かりの乏しい夜という設定は、水そのものの光を主役にするための選択でもある。 【素材・技法について】 雲肌麻紙に天然岩絵具。空は薄墨と灰の絵具を刷毛で横に引き、その筆跡をそのまま雲としている。水面は白い絵具を厚く置いて、暗い岸との明度差で流れを描く。蛍の光は胡粉の粒を核に周囲を滲ませたもので、絵具の粒子が実際に光を返すため、照明の向きによって見え方が変わる。 【見どころ】 手前の水中に沈む石に注目したい。流れの底が見えることで水の浅さが伝わり、渓流の冷たさが画面に加わっている。
菅かおるの作品