作品について
【作品について】 「陽光」は、銅に金箔と漆を施した105mm四方の小品です。タイトルが示す通り、光そのものをモチーフとしたこの作品は、金箔の輝きが温かみのある光の表情を生み出しています。銅の落ち着いた色調と金箔の明るい反射が一つの画面の中で共存し、木の台座とあいまって、日常のふとした瞬間に差し込む光——窓辺や木漏れ日のような——を想起させる空気感を纏っています。手のひらに収まるほどの小さな空間に、時間の記憶を封じ込めたかのような静かな佇まいが印象的な一点です。 【素材・技法について】 銅を主素材とし、金箔と漆を組み合わせた構成は、原田武の制作における素材へのこだわりを端的に示しています。原田は「素材を限定することによって得られる表現を目指しています。全て金属で形を作るだけでなく色も金属の化学変化で発色させることによって表現しています」と語っており、本作でも塗料に頼らない色彩表現の延長線上に金箔と漆が位置づけられます。金箔は光を受ける角度によって表情を変え、漆は深みのある艶と堅牢さをもたらします。銅・金箔・漆・木という異なる素材が一体となることで、金属の冷たさと有機的な温もりの両方が同居する独特の質感が生まれています。 【見どころ】 本作の奥行きは40mmあり、平面的な板作品ではなく立体としての存在感を持っています。正面から眺めるだけでなく、斜めや横から光の当たり方を変えて見ると、金箔が異なる色合いを返し、「陽光」というタイトルの意味が体感として伝わってくるはずです。原田は作品における「空気感」や「余白美」を重視しており、この小さな立体の中にも、見る者それぞれの記憶にある光の情景を呼び起こす余白が残されています。「自分の作品が見た人が共感していただくほどで成立し完成する作品だと思っています」という原田の言葉の通り、鑑賞者自身の記憶と重なる瞬間を待っている作品です。
原田武の作品