原田武の作品一覧

原田武 Takeshi Harada

晩夏

Late Summer

制作年2025
技法銅、真鍮、銀、銀箔、銅箔、漆、桐
サイズH260 × W150 × D90 mm
作品タイプユニーク
SOLD

作品について

銅や真鍮、銀といった金属の色味が、晩夏の空気に漂う湿度と残光を静かに湛える。鍛金・彫金によって形づくられた表面には、硫化カリウムや火焔酸化による化学着色が施され、塗料を用いず金属そのものの反応から生まれた色層が、夏の終わりの記憶が褪せていく感覚を素材の次元で体現している。幼少期の自然体験から立ち上がる「郷愁」を核に、季節の移ろいを金属の内に封じ込めた一作である。 **【作品について】** 「晩夏」は、銅・真鍮・銀といった金属素材に銀箔・銅箔・漆を組み合わせ、桐の台座の上に構成された立体作品です。タイトルが示す通り、夏の終わりの一瞬の情景が、手のひらに収まるほどの空間(H260×W150×D90mm)に凝縮されています。金属の表面には化学変化によって生み出された色彩が重なり合い、夏から秋へと移ろう空気の温度や湿度までもが感じられるような佇まいを持っています。桐の台座が生む余白が、作品の周囲にゆるやかな空間の奥行きを与えています。 **【素材・技法について】** 本作では銅・真鍮・銀という複数の金属を用い、鍛金によって金属板を叩き出して形を成形し、必要に応じて彫金の技法で細部の表情を刻み込んでいます。パーツはTIG溶接や銀鑞付けで接合され、中空構造によって見た目の重厚さに反した軽やかさが実現されています。色彩の表現には塗料を一切使わず、硫化カリウムによる化学反応やバーナーでの炙りなど、金属そのものの変色反応を精密にコントロールすることで発色させています。銀箔・銅箔がもたらす光の反射と、漆の深い艶が加わることで、金属だけでは到達し得ない色彩の幅が生まれています。原田自身が「素材を限定することによって得られる表現を目指しています。全て金属で形を作るだけでなく色も金属の化学変化で発色させることによって表現しています」と語るように、素材の制約をそのまま表現の豊かさへと転化させる姿勢がこの作品にも貫かれています。 **【見どころ】** 桐の台座と金属造形との間に漂う「余白」にも注目してみてください。原田の作品において台座は単なる土台ではなく、作品が存在する空間そのものの空気感を演出する要素です。晩夏という季節の移ろい——まだ残る夏の熱と、忍び寄る秋の気配——が、金属の色味の変化と余白の静けさの中に同居しています。「幼少期にはただただ夢中に観察し、身近にある小さい世界を覗き見していました。大人になって慌ただしい生活の中でついつい見落としてしまっていた感覚を思い出すきっかけになれば」という原田の言葉のとおり、この作品は日常の中で過ぎ去ってゆく季節の記憶を、金属の中に静かに留めています。

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