原田武の作品一覧

原田武 Takeshi Harada

道路

Road

制作年2025
技法銅、錫箔、漆、桐
サイズH260 × W150 × D80 mm
作品タイプユニーク
SOLD

作品について

銅の板から立ち上げられた小さな立体は、どこにでもある道の一場面を金属の中に封じ込める。錫箔の淡い光沢と漆の深い色調が路面や周囲の空気感を暗示し、桐の台座が作品に静かな軽さを与えている。鍛金・彫金の技法で成形された表面には、記憶の中の風景が持つ曖昧さと確かさが同居し、日常の光景を改めて見つめ直す契機を静かに差し出す。 【作品について】 「道路」は、その名の通り道路の一部分を銅・錫箔・漆を用いて立体造形として再現した作品です。高さ260mm、幅150mm、奥行き80mmという手のひらに収まるスケールの中に、普段何気なく踏みしめているアスファルトやコンクリートの路面の表情が凝縮されています。表面には錫箔と漆による色調の変化が施され、風雨にさらされ経年変化を重ねた路面の質感——ひび割れ、色ムラ、くすんだグレーの濃淡——が金属と漆の層によって再構築されています。桐の台座が作品を静かに支え、小さな路上の断片がひとつのオブジェとして空間の中に佇んでいます。 【道路というモチーフについて】 原田武の制作には、コンクリートブロックや車止めといった、通常アートの対象とされない無機物を選ぶことで「日常を再発見する」という一貫した姿勢があります。道路もまたその延長線上にあるモチーフです。原田自身、「日常において美しいと感じられるものだけではなく、それ以外のものの方が多数であり、その一つ一つにも目を向けていきたいと思った」と語っており、誰もが毎日目にしながらも意識を向けることのない足元の風景を、作品として切り取ることでその存在に光を当てています。「大人になって慌ただしい生活の中でついつい見落としてしまっていた感覚を思い出すきっかけになれば」という原田の言葉そのものを体現した作品といえます。 【素材・技法について】 銅板を鍛金によって成形し、道路の凹凸や厚み、断面の構造を立体的に造り上げています。表面には錫箔が用いられ、路面特有のくすんだ無彩色の質感が表現されています。さらに漆を組み合わせることで、色彩の深みと経年を感じさせる落ち着いた表情が加わっています。原田は「素材を限定することによって得られる表現を目指しています。全て金属で形を作るだけでなく色も金属の化学変化で発色させることによって表現しています」と述べており、塗料に頼らず素材そのものの性質から色と質感を引き出す姿勢がこの作品にも貫かれています。台座には桐が用いられ、作品が持つ「空気感」と「余白美」を静かに支えています。 【見どころ】 道路は本来、人や車が通り過ぎるためだけの存在です。しかしこの作品を前にすると、路面のひび割れや色の変化、風化した表面の微妙な起伏に自然と目が引き寄せられます。日常の中で最も見過ごされやすいものを、手のひらサイズの金属造形として差し出すことで、鑑賞者に「足元の景色を最後に意識したのはいつだろう」と問いかけてくる——原田が大切にする鑑賞者との対話が、この小さな道路の断片から静かに始まります。

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