作品について
絹の上に岩絵具と箔を用い、冬の椿を描いた小品。五月女佳織は幼少期から身近に椿を育つ環境で過ごし、繰り返しこの花を描いてきた。文化財保存修復を学んだ経験に裏打ちされた絹本への確かな絵具の定着と、箔がもたらす静かな光沢が、雪の季節に凛と咲く椿の気配を画面にとどめている。作家が「理想の箱庭」と呼ぶ心象の庭から切り取られた、冬の一景である。 絹の薄い織目を透かすように、雪椿の花弁が岩絵具の白と淡い紅で丁寧に描き起こされている。箔が控えめに添えられることで、冬の冷たい空気の中に差す光が画面にそっと宿る。作家が「理想の箱庭」と呼ぶ心象世界の一隅に咲く椿は、雪の季節に凛と開く花の一瞬を絹本の上に閉じ込めたものであり、文化財保存修復で培った素材への深い理解が、小品ながら確かな質感の奥行きを支えている。
五月女佳織の作品