作品について
【作品について】 白い木製パネルの上に、ギターアンプがスクリーンプリントで刷られている。アンプ本体は黒のインクで輪郭や格子状のスピーカーグリル、つまみ類が描かれ、その背後にはオレンジ色でアンプの別角度の輪郭線が重ねられている。上部には「POWER」の文字がオレンジのフリーハンドで大きく配され、「ON OFF」の表記やAC INPUT(100V/120V/230V)の電圧セレクターといったアンプ背面の仕様表示が画面左側に描き込まれている。オレンジの線がパネルの外へ飛び出すように、実物のシールドケーブルがパネルの周囲をぐるりと囲んで展示されており、平面作品でありながら立体的な広がりを持つ構成となっている。 【キュビズムとアンプの関係について】 岡﨑実央はピカソやブラックが発展させたキュビズム——様々な角度から見た対象の形を一つの画面に収める技法——を用いて制作を行っている。本作では、アンプの正面(スピーカーグリル、つまみ類)と背面(電圧セレクター、ON/OFFスイッチ)が同一画面に同居しており、一台の機材を前後から同時に捉えた構図となっている。黒い線で描かれた正面図とオレンジ色で描かれた背面・側面の輪郭線が重なり合うことで、複数視点の共存が色彩の違いによって整理されている。 【素材・技法について】 木製パネルにスクリーンプリントで刷られた作品である。岡﨑はキャンバスやアクリル画を中心に制作してきたが、本作では版によるシャープな線と、フリーハンドで書かれた「POWER」の文字の荒々しさが対比をなしている。フリーハンドの文字は「きっちりしたものを壊す」ためのもので、ライブ感や混沌としたエネルギーを表現する手法として岡﨑が一貫して用いてきたものである。 【見どころ】 パネルの外に配された実物のシールドケーブルにお気付きでしょうか。プリント上のオレンジの曲線がそのままケーブルへと接続するかのように構成され、絵の中の電気信号が現実空間へと流れ出すような仕掛けが施されている。正方形のパネル——岡﨑がプロレスのリングに見立てる形状——の上に描かれたアンプは、リングに轟く入場曲の音源装置をも連想させる。
岡﨑実央の作品