作品について
【作品概要】 画面に浮かび上がる「つぼみ」は、まだ開かれていない何かを静かに抱えています。花でもあり、感情でもあり、これから生まれようとする言葉のようにも見える——そんな曖昧な予感が、この作品全体を満たしています。アクリルガッシュの確かな色面とパステルの柔らかなにじみが一枚のパネルの上で重なり合い、つぼみの内側にある不確かさと外側の穏やかな存在感を同時に描き出しています。「不思議な」という冠がつけられたこのつぼみは、見る人それぞれの記憶や期待によって、異なる花を咲かせるのかもしれません。 【素材・技法について】 パネルを支持体に、アクリルガッシュとパステルという異なる質感の画材が併用されています。アクリルガッシュの不透明でマットな塗膜がつぼみの輪郭や色彩の骨格をつくり、その上からパステルが重ねられることで、粉体顔料特有のやわらかな光と微細な粒子感が表面に宿ります。塗り込める層と、指先や筆圧で定着させる層との対話が、画面に奥行きと呼吸のようなリズムを生んでいます。W50×H36×D3cmという横長のパネルは、つぼみがゆったりと横たわる、あるいは地平線のように広がる空間を確保しており、小品ながら視線をとどめる密度を持った一点です。
高津ゆいの作品