作品について
【作品概要】 静かに祈るような気配を湛えた一枚です。W14×H18cmという手のひらに収まるほどの小さなパネルの中に、誰かの安全や平穏を切に願う心が凝縮されています。アクリルガッシュの不透明な色面とパステルの柔らかなにじみが重なり合い、祈りの温度のような、確かでありながらもどこか儚い空気感を画面に生み出しています。 【タイトルについて】 「無事を願う」という言葉は、日常の中で誰もがふと心に浮かべる素朴な祈りです。大げさな宗教的行為でも劇的な感情の爆発でもなく、ただ静かに、大切な誰かが今日も変わらず過ごしていることを祈る——その慎ましい心の動きがタイトルにそのまま表れています。言葉の飾り気のなさが、かえって観る者それぞれの記憶や感情を呼び起こす余白となっています。 【素材・技法について】 パネルを支持体に、アクリルガッシュとパステルを併用して描かれています。アクリルガッシュは発色が鮮やかで隠蔽力が高く、色を重ねても下層が透けにくい特性を持ちます。一方、パステルは粉体の顔料が紙やパネルの表面に定着することで、指先の圧や動きがそのまま画面に残ります。この二つの画材の質感の対比——塗り込められた堅固な色面と、ふわりと載せられた粒子の柔らかさ——が、祈りの中にある「強さ」と「繊細さ」の両面を視覚的に伝えています。厚み3cmのパネルが作品にオブジェとしての存在感を与え、壁にかけた際にわずかに浮き上がるその佇まいもまた、日常の中にそっと差し出されたお守りのような親密さを感じさせます。
高津ゆいの作品