作品について
【作品概要】 画面の中心に据えられた存在感が、静かにこちらを見据えている。「玉座」と名付けられた本作は、権威や威厳といった言葉が想起させる重々しさよりも、むしろそこに座すものの内面的な孤独や覚悟を感じさせる一枚です。アクリルガッシュの不透明な色面とパステルの柔らかな粒子が同じ画面上で交差し、堅さと繊細さが同居する独特の質感を生み出しています。W72.7×H53cmのパネルという中型の画面でありながら、その存在感は実際のサイズ以上の広がりを持って迫ってきます。 【タイトルについて】 「玉座」という言葉は、王や女王が座る椅子を意味すると同時に、そこに座すことで初めて生まれる責任や重圧をも暗示します。本作において玉座は単なる装飾的モチーフではなく、ある場所に「在る」ことそのものへの問いかけとして機能しているようです。観る者は、玉座に座す主体に自分自身を重ねるかもしれません。 【素材・技法について】 アクリルガッシュによるマットで均質な塗面と、パステルによる粉体の柔らかな発色が一枚のパネル上で共存しています。アクリルガッシュは乾燥後に耐水性を持つため下層の色を安定させ、その上にパステルを重ねることで、触れれば崩れそうな儚さと確固たる色彩の土台が層をなします。パネル支持体を採用することで画面に反りや歪みが生じにくく、絵具とパステルの微妙な質感の差異がフラットな表面上でより鮮明に際立っています。
高津ゆいの作品