作品について
【作品について】 正方形のキャンバス全面に、二人のレスラーが組み合う姿がキュビズムの手法で展開されている。ライトブルー、ピンク、オレンジ、ゴールドといった色面が鋭角的に分割され、複数の視点から捉えた身体のパーツ——丸い目、握りしめた拳、絡み合う脚——が一つの画面上で同時に存在する。「TAP?」「ASK HIM!」「MOVE!」「ALMOST THERE!」「LET'S F*CKIN'——」といったフリーハンドの文字が画面の至るところに散りばめられ、下部には「FIGURE 4 LEGLOCK」というタイトルが力強く配置されている。 【フィギュア・フォー・レッグロックについて】 タイトルが示す「フィギュア・フォー・レッグロック」は、相手の両脚を自身の脚で4の字に固める関節技である。画面に繰り返し現れる数字の「4」は、この技の形そのものを示している。「TAP?」(ギブアップするか?)、「ASK HIM!」(聞いてくれ!)という文字は、レフェリーが技を受けている選手にギブアップの意思を確認する際の声であり、「ALMOST THERE!」は極まりかけた技への実況や観客の高揚を想起させる。これらの言葉はまさにこの技が極まる瞬間の、リング上と客席が一体となった空気そのものである。 【素材・技法について】 岡﨑はピカソやブラックが発展させたキュビズムを用いて、プロレスを360度囲む観客それぞれの視点から見た姿を一つの画面に収める。120cm四方の正方形キャンバスはプロレスのリングに見立てた形状であり、アクリル絵具による明快な色面構成がその意図を支えている。画面に描き込まれる文字は下書きやレタリングを行わずフリーハンドで入れられる。これは「きっちりしたものを壊す」行為であり、写真や映像では伝えきれない観客の自由な声援やカウント音、会場の混沌としたエネルギーを表現するためである。また、随所に残るグレーの下塗りは、プロレスにおける「ガチか仕込みか」白黒つけないグレーな部分を色彩にも反映させたものである。 【見どころ】 画面のあちこちに散らばる「4」の数字にお気付きだろうか。黄色い大きな4、ブルーの4、フィギュアの身体に重なる4——技の名称であると同時に、画面構成のリズムを生む造形要素として機能している。上下逆さまの文字、斜めに走る文字列など、視線は一箇所に留まることなく画面全体を巡る。この視線の動き自体が、リングサイドで技の攻防を追う観客の目の動きと重なっている。
岡﨑実央の作品