作品について
銅や真鍮、錫といった金属素材に色箔や真鍮粉を重ね、風景の記憶を立体として再構築した作品。原田武は子供時代に自然を観察した体験から浮かび上がる「静止した記憶」を制作の起点とし、塗料を用いず硫化カリウムや火焔酸化による化学着色で金属そのものから色彩を引き出す。鍛金・彫金を駆使して成形された表面には、時間の経過とともに変容する記憶の質感が宿り、見る者の内にある郷愁の感覚を静かに喚起する。 銅、真鍮、錫の金属板が鍛金と彫金によって成形され、色箔と真鍮粉が表面に微細な色調の変化を与えている。化学着色や火焔酸化による塗料を用いない発色が、金属でありながら風景の空気感や光の移ろいを感じさせる。2023年個展「scenery」で試みられた、記憶の中の風景を抽象的に再構築する方向性を示す一作であり、郷愁という制作の根幹が静かに通底している。
原田武の作品