作品について
【作品について】 画面全体を覆う鮮烈な蛍光グリーンのスプレーと、白黒のコントラストが激しくぶつかり合う一作。プロレスの技「ポイズン・ミスト」──レスラーが口から毒霧を吹きかける瞬間を捉えている。画面左上の「EWWWW」、下部に大書された「POISON MIST!」、右側の「OH!」といった文字群がフリーハンドで画面を埋め尽くし、霧が拡散していくような勢いと混沌がリネン地いっぱいに展開される。キュビズムの手法でレスラーの顔や身体が複数の角度から分解・再構成され、目や口、腕のパーツが幾何学的なブロックとなって重なり合う。 【ポイズン・ミストというモチーフについて】 ポイズン・ミストは、レスラーが口に含んだ液体を相手の顔面に吹きかけるプロレス特有のパフォーマンスである。本作では毒霧の色そのものが蛍光グリーンのアクリル絵具で再現され、画面左半分から中央にかけてグラデーション状に噴き広がっている。緑の霧が晴れた右半分は白と黒のモノクロームで描かれ、霧の「ビフォーアフター」が一枚の中に共存する構成となっている。 【素材・技法について】 リネン地にアクリルで描かれた120×120cmの正方形のキャンバスは、プロレスのリングに見立てた形状である。岡﨑は「描く競技に合わせてキャンバスの形状を変える」としており、プロレス作品では正方形が選ばれる。「EWWWW」「POISON MIST!」「OH!」などの文字はすべて下書きやレタリングなしのフリーハンドで描かれている。これは「写真や映像では伝えきれない観客の自由な声援やスナップ音、カウントなどのライブ感、混沌としたエネルギーを表現するため」と語られている。 【見どころ】 蛍光グリーンが画面左から霧のように滲み出し、右に向かって徐々に白へ抜けていく色彩のグラデーションにご注目いただきたい。毒霧が実際に空間を漂っていくような臨場感が、スプレー的な塗りの濃淡によって生み出されている。タイトルに「DRAWING」とあるとおり、黒い線描のエネルギーがこの作品の骨格をなしており、色と線の二層構造が画面にリズムと奥行きを与えている。
岡﨑実央の作品