原田武の作品一覧

原田武 Takeshi Harada

Trace

制作年2024
技法銅、銀、銅、鉄、錫、色箔
サイズH440 × W300 × D300 mm
作品タイプユニーク
PRICE (TAX INCL.) ¥814,000
お問い合わせ

作品について

銅や銀、鉄、錫、色箔といった多様な金属素材を用い、鍛金・彫金・化学着色などの伝統的金工技法によって構成された立体作品。原田武は、子供の頃に自然を観察した記憶を「静止した像」として手繰り寄せ、金属で再構築することを制作の核としている。タイトル「跡」が示すように、時間の経過のなかで残されたものの痕跡を、金属表面の色彩変化や素材の質感によって定着させている。塗料を用いず硫化カリウムや火焔酸化で得られる色調が、記憶と現実のあわいにある静かな余韻を湛えている。 【作品について】 「跡」は、道路をモチーフとした銅と漆による立体作品である。W30×H44×D30cmという手に取れるほどの大きさの中に、普段は足元に広がるだけで意識されることのない路面の表情が凝縮されている。銅の地肌と漆の色味が重なり合い、アスファルトや舗装面に刻まれた時間の経過——ひび割れ、擦れ、摩耗といった「跡」を想起させる。桐の台座が作品の周囲に静かな余白を生み出し、道路という日常の断片がひとつの造形作品として空間の中に佇んでいる。 【道路というモチーフについて】 原田武はコンクリートブロックや車止め、タイルなど、通常アートの対象とされない無機物を積極的にモチーフとして選んできた。その理由について本人は「日常において美しいと感じられるものだけではなく、それ以外のものの方が多数であり、その一つ一つにも目を向けていきたいと思ったからです」と語っている。道路もまた、毎日目にしながら誰も立ち止まって見つめることのない存在である。タイトルの「跡」は、路面に残された無数の痕跡——車輪の轍、補修の継ぎ目、風雨による浸食——が時間の記憶そのものであることを示唆している。幼少期に地面を覗き込んで夢中になった視線を、大人になった今もう一度取り戻す。この作品はそうした原田の制作姿勢を端的に体現している。 【素材・技法について】 主素材の銅は鍛金によって成形される。金属板を焼きなまして柔らかくし、金槌で叩きながら形を立ち上げていく工程は、路面の凹凸や質感を銅板の表面に物理的に刻み込む作業でもある。着色には漆が用いられており、塗料を一切使わず金属の化学変化や異素材との組み合わせで色を得るという原田の一貫した方針がここにも貫かれている。漆の深い色調が銅の地金と交わることで、アスファルトが経年変化で見せる黒みや艶が表現されている。台座の桐は軽やかな色合いと木目を持ち、作品が纏う空気感や余白を演出する役割を果たしている。 【見どころ】 この作品の前に立つとき、ぜひ視線を低くして路面を覗き込むような角度から眺めてみていただきたい。日常の中で無意識に踏みしめている地面が、金属と漆によって「見るもの」へと変換されている。原田は「自分の作品が見た人が共感していただくほどで成立し完成する作品だと思っています」と述べている。道路に刻まれた無数の跡に、自分自身の記憶や時間の断片を重ねたとき、この作品は完成する。

原田武の作品

And More