作品について
【作品について】 「COBRA CLUTCH」は、プロレスの関節技「コブラクラッチ」をモチーフに、二つの身体が絡み合う瞬間をキュビズムの手法で描いた2024年のアクリル作品である。白い背景の中央に、ピンク、オレンジ、水色、グレー、黒といった明快な色面で構成された二人のレスラーの姿が浮かび上がる。上方の人物はパイプを咥えたような茶色の口元と鋭い眼差しを持ち、下方の人物は見開いた丸い目と歪んだ表情で技を受けている。握りしめた拳、掴む指先、組み合う腕が幾何学的な面の重なりとして画面に圧縮され、技の攻防がもつ緊張感が静止画の中に凝縮されている。 【キュビズムとプロレスについて】 岡﨑は「プロレスは観客が360度選手を囲んでいて、席によって見え方が異なり、それぞれの角度・視点に良さがあります。そこで、ピカソやブラックが発展させたキュビズムを用いてプロレスを描いています。すると、多くの角度から見た美点を自由自在に表現できました」と語る。本作でもレスラーの顔が正面と側面を同時に見せるように描かれ、腕や手の形状が複数の角度から分解・再構成されている。正方形のキャンバスはプロレスのリングに見立てたものであり、50cm四方という画面の中にリング上の攻防が凝縮されている。 【見どころ】 画面右側や下部に配された白黒の縞模様にお気付きだろうか。これらはリングロープやコーナーポストを想起させ、闘いの舞台を暗示する要素として画面に組み込まれている。また、下塗りとして残されたグレーの色面は、プロレスの「ガチか仕込みか白黒つけない」グレーな部分を色彩に反映させるという岡﨑独自の手法である。コブラクラッチという一つの技を題材にしながら、攻める側と受ける側、痛みと耐え、多視点と一画面——プロレスが持つ多義性を視覚言語として体験できる一作である。
岡﨑実央の作品