作品について
蒲公英の綿毛に止まる二星天道虫を、銅や真鍮、銀といった金属素材で精緻に造形した蓋物。原田武は子供の頃に自然の中で動植物を観察した記憶を「郷愁」として作品の核に据え、記憶の中で静止した情景を金属で立体化する。鍛金・彫金を駆使し、金箔や七宝によって色彩を与える手法は、塗料に頼らず素材固有の発色を引き出すものである。外観からは蓋物と気づかない造形に、日常の小さな世界を手に取る楽しさが宿る。 銅と真鍮で成形された小ぶりな蓋物の上に、蒲公英の綿毛と二星天道虫が精緻に再現されている。金箔と七宝による彩色は塗料に頼らず、金属そのものの化学反応と素材の組み合わせから色彩を引き出す手法に基づく。野道の片隅で目にした光景を記憶から手繰り寄せるように立体化した本作は、幼少期の自然観察の記憶を「用のある器」に封じ込め、蓋を開ける所作の中に郷愁を宿らせている。
原田武の作品