作品について
【作品について】 本作《Jumping Knee》は、プロレスの打撃技「跳び膝蹴り」の瞬間をキュビズムの手法で捉えた一枚である。白い背景の上に、黒の太い輪郭線で区切られた幾何学的な面が折り重なり、二つの人体が激突する構図が浮かび上がる。山吹色、赤錆色、ペールピンク、水色、ゴールドがかったベージュ、グレーといった色面がモザイクのように組み合わされ、画面中央にはうねるような有機的曲線——指や関節の丸みを想起させる円形の連なり——が描き込まれている。左上には王冠のような黄色い形体が放射状に広がり、技が炸裂した衝撃のエネルギーを視覚化しているかのようだ。 【キュビズムとプロレスについて】 岡﨑は「プロレスや格闘技はリングを中心に360度を観客が囲んでおり、席によって見え方が異なり、それぞれの席・視点に良さがあります。そこで、ピカソやブラックが発展させたキュビズムを用いて闘いを描きました。すると、多くの角度から見た美点を自由自在に表現できました」と語っている。本作でも、膝を突き上げる側の身体と受ける側の身体が、正面・側面・上方など複数の視点から同時に分解・再構成されており、一瞬の技の中に潜む多角的な造形美が一つの正方形の画面に凝縮されている。正方形のキャンバスはプロレスのリングに見立てられている。 【見どころ】 画面の随所に散りばめられた円と楕円の連なりに注目していただきたい。指先の丸み、関節の膨らみ、筋肉の隆起が、装飾的なパターンへと変換され、生身の肉体がぶつかり合う質感を抽象のなかに留めている。また、下地にわずかに覗くグレーの層は、岡﨑が意図的に残すもので、プロレスにおける「ガチか仕込みか白黒つけないグレーな部分」を色彩に反映させたものである。右下のサインには「mio 2023」と記され、フリーハンドの筆致がライブ感をそのまま画面に刻んでいる。
岡﨑実央の作品