作品について
【作品について】 鮮やかな山吹色の円形キャンバスの中に、うずくまるようなポーズのウサギが描かれている。赤茶・こげ茶・白・淡いブルーの面が太い黒の輪郭線で区切られ、耳やひげ、脚といったパーツが複数の角度から同時に捉えられた構成になっている。丸みを帯びた体の面と直線的なひげ・耳の線が交差し、動物の柔らかさと幾何学的な力強さが共存する一枚である。 【円形キャンバスについて】 岡﨑実央は、描く競技に合わせてキャンバスの形状を変えることで知られている。相撲には丸、総合格闘技には六角形、プロレスのリングには正方形といった具合に、競技の場そのものを画面の形に反映させる。本作「ROUND HINATA」では円形(トンド)のキャンバスが選ばれており、タイトルの「ROUND」がその形状を示している。日なたに座るウサギという穏やかなモチーフと、背景を埋め尽くす暖かな黄色が、まさに陽だまりの温度を画面全体から伝えている。 【技法について】 岡﨑の作品の根幹にあるのは、ピカソやブラックが発展させたキュビズムの手法である。「様々な角度から見た対象の形を1つの画面に収める」この技法により、ウサギの体は正面・側面・上面といった複数の視点から捉えた形が一つの画面に再構成されている。アクリル絵具による平坦な塗りと明確な輪郭線がポスターのような視認性を生み出しつつ、面の重なりと角度のずれがキュビズム特有の奥行きを作り出している。 【見どころ】 プロレスや格闘技をメインモチーフとする岡﨑の作品群の中で、本作は動物を題材にした一点である。しかしキュビズムによる多角的な再構成、太い黒線による力強い輪郭、面と面の衝突するような色彩構成は、闘いを描く作品と同じ文法で成り立っている。闘技のエネルギーを動物の佇まいに置き換えたとき、キュビズムという手法がジャンルを超えて機能することを示す作品でもある。
岡﨑実央の作品